少し前に、「血精液症」という症状についての記事を書いた。白いはずの精液に赤い血液が混じるという、見た目はショッキングな症状なのだが、多くの場合はそれほど心配しなくていい――という内容だった。
精液に血が混じっても大丈夫なら、尿に混じったって同じことだろう……と考えるかもしれない。
ところがそう簡単な話ではないのだ。
おしっこに、見ただけでそれと分かるような血液が混じっている場合は、あまり呑気にしてはいられない。とりあえず、近くの泌尿器科を探すくらいのことはしたほうがよさそうだ。
「痛みがない血尿」こそ危ない
一口に「血尿」と言っても、見たことのない人には、それが一体どんなものなのか、見当もつかないだろう。
「尿の色合いはその時々で濃淡があるし、人によって色の表現の仕方も異なるので一概には言えませんが、よく言われるのが“鉄さび”とか“赤ワイン”、あるいは“濃い紅茶”に似た色合い――というもの。ただ、色が濃ければ重症とか、薄ければ安心ということはない。血尿の色の濃さは、病気の悪性度に比例しません」
と語るのは、大阪市中央区日本橋にある岩佐クリニック院長で、泌尿器科医の岩佐厚医師。血尿は男性にも女性にも起き得る症状だが、確実に驚いて慌てるのは男性だという。
「女性は生理があるので、“出血”にもある程度馴れている。ところが男性にはその免疫がないので、多くの場合はうろたえることになる」(岩佐医師、以下同)
血尿が出る原因はいくつかある。良性の前立腺肥大症などの可能性もあるが、注意しなければならないのはやはり悪性の疾患、つまり「がん」だ。
「痛みなどの症状がなく、それでいて目で見てそれと分かる血尿を“無症候性肉眼的血尿”と呼びます。痛みがあれば膀胱炎や尿管結石などの可能性が出てきますが、そうした症状が何もないのに血が出るなら、膀胱がんなどの重大疾患を疑わないわけにいきません。男性の場合、前立腺がんで血尿が出ることもありますが、確率として高いのは膀胱がん」