ピアニストの小山実稚恵さん ©Wataru Nishida

 先年、デビュー30周年を迎えたピアニストの小山実稚恵さん。『点と魂と スイートスポットを探して』(KADOKAWA)を刊行した。

「スイートスポットとは、ピアノでいえば、力まずに伸びやかに、自然にスーッと聴き手に届く音のでる芯になるところ。それが、どんな世界にもあると思って、色々な方に聞いてみたんです」

 マラソンの高橋尚子や狂言師の野村萬斎、100歳を越えて活躍する医師、日野原重明など、各界で活躍する人たちとの対話のなかで得たものとは。

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「色々とありましたが、印象に残っているのは、大竹しのぶさんの、“セリフは言葉を覚えるのではなく、内容を覚える”という言葉です。音楽家も一般の人には、暗譜が一番大変だと思われがちですが、暗譜は訓練でできるようになります。それよりも、作曲家の込めた魂がどこにあるのかを感じとることが大切です」

 今秋、12年間24回のリサイタルシリーズが完結する。小山さんにとって、12という数字には特別な意味があるのだという。

「1年は12カ月、1日は午前午後の各12時間。そして、1オクターブは12音で構成されています。この数字は私たちにとって重要な数字に違いありません。だから、1年に2回、12年24回で一巡りするリサイタルを考えつきました。曲も第1回目がハ長調にはじまり、この秋の24回目がハ短調に終るなど、一巡するように選びました。人生の旅をするつもりで始めましたが、でもまだゴールという感じではないですね(笑)」

点と魂と スイートスポットを探して

小山 実稚恵(著)

KADOKAWA
2017年5月2日 発売

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