東京オリンピック後の景気失速や米中貿易摩擦の影響などが懸念される「2020年の日本経済」。果たして、この状況に日本企業はどのように立ち向かうべきか。“財界総理”の中西宏明経団連会長が「文藝春秋」2月号の単独インタビューに応じた。

すっかり髪の毛も抜けました

 中西氏と言えば、2019年4月に、多くの経団連企業が取り入れてきた新卒一括採用や終身雇用制度の見直しに言及し、大きな話題を呼んだ。直後の6月には、リンパ腫を患ったことを公表。治療に専念するため、9月の復帰まで休養を余儀なくされた。

 今回、東京・大手町の経団連会館でインタビューに応じた中西氏。取材の冒頭、3カ月半に及んだ入院生活を振り返った。

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中西宏明経団連会長 ©文藝春秋

「入院して最初の頃は本当にしんどかったですね。抗がん剤治療をしたら、すっかり髪の毛も抜けました。筋力も落ち、少し歩いただけで息が切れる。ただ、幸いにも副作用はほとんどなく、ひと月半ほどで腫瘍は消えた。治療は計画通りに進み、先生からも『こんな順調な患者はめったにいない』と言われるほどでした。

 9月上旬には仕事に復帰したのですが、月末にまた抗がん剤治療をすることになっていた。今回も大丈夫だろうと思っていたら、その後ひと月くらい調子が相当悪かった。担当医に『きつい』と愚痴をこぼしたら、『普通の人は最初からそうなんです。今頃言っても副作用のうちに入りません』と言われてしまいました(苦笑)」

文在寅政権が云々という以前に……

 経済界がいま最も頭を悩ませている問題の1つが、隣国・韓国との関係だろう。すでに韓国人観光客の激減など日本経済にも大きな影響が出ている。なかでも徴用工問題を巡って、韓国側が、新日鉄住金(現・日本製鉄。同社の進藤孝生会長は経団連副会長を務めている)など民間企業が持つ資産の現金化に踏み切った場合、さらなる関係の悪化は必至だ。

 中西氏は日韓関係をどう見ているのか。

©文藝春秋

「日韓関係は複雑で難題――経済界から見ても本当に悩ましい限りです。

 私の見るところ、文在寅政権が云々という以前に、韓国特有の国内事情の問題があります。政権が代わると、政策も180度変わってしまう。朴槿恵前大統領のように逮捕される例も珍しくありません」