韓国の20代の間では、男女で文在寅大統領への評価が大きく異なるという。その理由とは? ソウル在住の現地ジャーナリスト・金敬哲氏がレポートする。
◆◆◆
「超“格差”社会」といわれる韓国で、「超“葛藤”社会」という言葉が目下流行している。
韓国語でいう葛藤とは「個人や集団の持つ2つ以上の目標や情緒が衝突する現象」のこと。現在韓国では理念と地域、年齢や性別など社会の全般にわたり、「葛藤」による分断と対立が「最高潮」に達していると言われている。
広がる若年層の「ジェンダー葛藤」
韓国社会の深刻な「葛藤」の背景には、一部の支持層に向けた政策ばかりが目立つ文在寅(ムン・ジェイン)政権の内政がある。中でも最も深刻なのが、若年層で顕著な「ジェンダー葛藤」(男女間の対立)だ。
1月15日、韓国の日刊紙「文化日報」は、全国の20代(19-29歳)男女を対象にした世論調査の結果を発表したが、20代の男女の間で文政権に対する評価が明らかに分かれた。
まず、文大統領について「よくやっている」と答えたのは、男性の37.2%に比べ、女性は62.0%と大幅に高かった。一方、文大統領が「間違っている」と答えた男性が53.8%いたのに対し、女性は29.1%にとどまった。
韓国社会を揺るがした曺国(チョ・グク)前法相のスキャンダルに対する検察捜査についても、男性の61.8%が「検察捜査は正当だ」と答えた半面、女性は40.7%が「検察捜査は不当だ」と答えた。
文政権の若者の雇用政策についても、女性の56.1%が肯定的に評価したが、男性の58.6%が否定的だった。
韓国の20代の男女間で文在寅政権や政策に対する支持率の格差が生じる理由は、「フェミニスト政権」を自任している文在寅政権に対し、韓国の若い男性が「逆差別」を感じているためだ。
『82年生まれ、キム・ジヨン』で描かれた現実
韓国における女性の立場を描いて話題になったのが、日本でもベストセラーとなった韓流小説『82年生まれ、キム・ジヨン』である。韓国で100万部以上売れたこの本は、34歳の専業主婦のキム・ジヨンを通じ、韓国女性たちが学校や職場で受けている差別、就職市場で経験する不平等、「独り育児」の現実、仕事経歴断絶の問題などを取り上げ、大きな社会的反響を起こした。
日本では、この本についてK-POPスターがコメントしたことで売上が伸びたとされているが、韓国でこの本の人気に火を付けたのは、文在寅大統領をはじめとする進歩系の政治家たちだ。