先週末、日本各地ではセンター試験が行われた。入試改革で二転三転しながらひとまず現行の形では最後となったセンター試験だが、熾烈な受験戦争で知られる韓国では、政治の混乱で受験生が日本以上の混乱にさらされているという。超・学歴社会の実像を、韓国社会の苛烈な競争を描き出した『韓国 行き過ぎた資本主義』(講談社現代新書)の著者、フリージャーナリストの金敬哲氏が語った。
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「最近、子どもを中学校の頃から、メンタルクリニックに通わせることが流行ってるのよ」
そう教えてくれたのは、ソウルでも最も教育熱の高い地域、大峙洞(テチドン)に住む母親です。私が韓国の教育問題を取材していて一番の衝撃を受けたのは、この事実でした。
大峙洞は、ソウルの富裕層が住む江南(漢江の南岸)エリアにあります。江南には名門高校や中学校が集まり、その中にある「大峙洞」はわずか3.53平方キロメートルのなかに1000あまりの学習塾がひしめく地区。いまや韓国中から子どもたちが集まり、最も受験競争が激化している場所です。
実際に取材したメンタルクリニックの所長は「最近も英語幼稚園に通う7歳の女児が来院しました」とのこと。そのクリニックには、これまで勉強に疲れた5歳から高校生までの生徒たちが訪れています。幼稚園や小学校のころから子どもがメンタルクリニックに通う状態が普通に起こっているのです。
「大峙洞キッズ」のカバンの中身
生まれたときからほんの一握りの韓国社会の上層に入るために勉強漬けになっている「大峙洞キッズ」たち。そのうちのひとり、小学5年生の男の子のかばんの中身をみせてもらうと、数学のテキストに加えてTOEFL関連のリーディング、文法、単語集などの教科書。さらには『ハリー・ポッター』の英語の原書まで、ぎっしり詰まっていました。彼は、毎日3時間ずつ数学塾と英語塾に通い、数学塾では中学3年の授業を受けているといいます。こうした塾では、学校の内容を遥かに超えた先の内容を教えて、小学生の時から大学受験の準備をしているのです。