昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載クローズアップ

「おおきく振りかぶって」舞台化 「長寿作品」「野球」をどう表現するか

成井豊(劇作家・演出家)――クローズアップ

成井豊さん

 緻密な野球理論、少年の心の機微と成長を描き、爆発的な人気を博すマンガ『おおきく振りかぶって』。本作の舞台化を手がけたのは、劇作家・演出家の成井豊さんだ。

「2018年の作品の再演と、今回の新作を合わせて、ダブルヘッダーということになります。もちろん、野球の試合を舞台上で演じるわけで、しかも脚本が2つあるとなると、稽古をしていても『あれ。このシーンはどっちの試合の3回表だ?』なんてことがあったりします。ですが、初演時の役者が7割ほど再登板しているので、大きな混乱もなく、まずは安心して稽古ができていますね」

 原作はすでに30巻を超える長寿作品。作者にとってもファンにとっても、どのシーン、どのキャラクターであっても作品に欠かせない重要なパーツ。舞台化のため刈り込むのには苦労したはずだ。

「携わる前から『おお振り』は好きでした。主人公の友情が育っていく場面には涙したものです。そういう膨大な素晴らしいシーンがあるのを承知した上で、舞台として一幕に落とし込むという仕事が好きですねえ。作者のひぐちアサさんからも太鼓判をいただきました。長いストーリーのなかでも何度でも読み返したくなる部分というのは、読者ごとにバラバラだということはないと思うんです。勘所を外さず脚本にしていく、改変とは違う圧縮という作業、自信があるんですよ。だから刈り込むというよりどんどん詰め込んでいく。情報量過多でいいじゃないですか」

 登場人物たちの心情はまだしも、決して広くない舞台で、いかに野球というスポーツのダイナミズムを描くのか。

「知恵の絞りどころですね。名場面ともなると、演者の数は多くなる。タッチ、アウトの場面に至るまで、たくさんのプレーが積み重なり最終局面に繋がるわけです。でもそれを時系列どおりにひとつひとつ、暗転暗転で繋いでも野球の面白さは伝わらない。すべてが同じ舞台の上で生じて、個々のプレーがはっきり分かって、最後の局面がバシンと決まる――そういう演出を考えました。舞台上で上下(かみしも)どちらに走れば一塁に出ることになるのか、ルールを細かく詰めています。それでも観客が舞台を見ていれば自然とそのルールがわかるようになっていると思います。ただ、役者にはその分負担を強いているかもしれませんね」

 サブカルチャー作品を原作にした世界観で、イケメンたちが歌い踊る。世はいわゆる2.5次元舞台が花盛りだが、本作もその一つだろうか。

「それはお客さんが決めてくださればいいのかなと。私は、いつものキャラメルボックスの演出のつもりでやっています。とにかくエンタメなんだという意識でやりました。私も業界歴は長いし、おっさんでもありますが、若い役者たちが活躍する舞台ということで、キャリアで物を言わない、柔軟であることを自分に課して作品を作っています。名作がどう仕上がったか、ぜひ足を運んで見てほしいですね」

なるいゆたか/1961年、埼玉県生まれ。劇作家・演出家。早稲田大学第一文学部卒業。演劇集団キャラメルボックス代表。舞台の他にテレビドラマの脚本、小説なども手がける。

INFORMATION

舞台『おおきく振りかぶって』
公演日は2月14日~24日。詳細は公演HPにて
http://oofuri-stage.com/

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー