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「お正月だから、今日は色々と盛り込みました。棋士の基本は盤を挟むことです。この空間は狭いですから、近くでプロの本気を見て欲しいと思っています」(先崎九段)


 記者が訪れたのは午後の部の中盤で、指導対局の真っ最中だった。すべてが「駒落ち」と呼ばれるハンデ戦で、プロの駒を少なくし、戦力をダウンさせて指す。アマチュア初段なら、プロ棋士が飛車と角を落とす「二枚落ち」が妥当だろう。

会場をぐるぐるまわりながら指導対局を行う先崎九段(左)と佐藤九段。

「まずほめてあげなさいよ、もう理屈っぽいんだから」

 指導対局は棋士ひとりで同時に複数のアマチュアを相手にすることが多いが、今回の「ぐるぐる将棋」は複数の棋士がぐるぐると会場を歩き回り、目についたところからどんどん指し継いでいくスタイルだ。参加者は8人で、老若男女の将棋ファンは真剣な面持ち。「うーん」とため息が漏れ、顔を真っ赤にして考える。緊張をほぐすためか、先崎九段が「いや、今年見たなかでいちばんよい手だねぇ。今日しか将棋盤を見ていないけど(笑)」と話しかけていた。

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 指導対局といっても、スパルタで教えられることはない。佐藤九段は飛車取りをうっかりしたファンに優しく指摘し、貞升女流初段は好調な指し回しを続けるアマチュアに「いやー、どうすればいいか分からないですね」とにこやかに笑っていた。

 

 同世代の佐藤九段と先崎九段の軽妙なやり取りも面白い。勝利を収めた女性が「木村(一基)王位には勝たせてもらえないんです」とぼやけば、「参考にならない受けをされそう(笑)」とひと言。また、ある男性が詰みを熟考のすえに発見した。投了した佐藤九段が「こうすれば勝ちが速かったですね」と感想戦を始めようとすると、先崎九段が「まずほめてあげなさいよ、その詰みを見つけたことに。もう、理屈っぽいんだから」と厳しく突っ込む。佐藤九段も思わず苦笑していた。