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“超多忙”将棋連盟会長・佐藤康光九段が「それでもファンとの指導対局に時間を割く理由」

“超多忙”将棋連盟会長・佐藤康光九段が「それでもファンとの指導対局に時間を割く理由」

2020/01/26

「負けました」と言うのはやっぱり大変です

――プロの対局を観るのが好きな「観る将」ファンに聞いた話です。スマホで初心者用のコンピュータ相手に将棋をやると、王手をかけられたら教えてくれたり、駒の利きを表示する機能があるので指しやすいそうです。指導対局はそれがなくなるから、将棋をルール通りに指すだけでもハードルが高いといっていました。

佐藤 子ども大会を見ていても、王手放置と二歩の反則がけっこうありますからね。特に初級者の部だと、5局に1局はそれで勝負がつくイメージで、実際に詰まずに終わることもままあります。1手詰みが分かるのもかなりの実力なんですよ。アマ有段者でも実戦で3手詰めに気が付かないケースもありますし、羽生さんでも一手頓死したことがあるぐらいですから(笑)。

 将棋はルールを覚えてから、7~8級までは難しい気がしますね。どうしても負けが込みますし、将棋は「負けました」といわないといけないゲームです。それが自分を律する意味では長所なんですけど、やはりいうのは大変ですし。

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 自分なりの楽しみ方で続けて、強くなるきっかけをつかめれば、あとは自然と上達していくと思うんですよ。プロの将棋を見ているとイメージは自分なりに湧くと思うので、それにヒントを得られればいいかなと思うんですけど。

 

――最後に、今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、佐藤九段は京都で聖火ランナーを務めます。

佐藤 最初で最後の経験で、しっかり準備して臨みたいですね。実はこの前、先輩棋士とその話をしていた時に「練習したほうがいい」とアドバイスを受けました。のんびり構えていたんですけど、試しに走ってみたらすぐに息が上がってしまったんです。もう年なんですね(笑)。普段、私は走ることがあまりないので、練習しないといけません。

 

◆◆◆

 最後はゲーム大会とサイン会が行われた。催し物のひとつが「黒ひげ危機一髪」。若手のとき、棋士同士で遊んだゲームだ。佐藤九段と参加者が交互に剣を樽に刺していく。午前中は全勝だった佐藤九段、残念ながら午後の部は負けが込み、黒ひげがポーンと跳ぶたびに体をビクッとさせて驚いていた。

 数字当てゲームのあとは、先崎九段から10の質問。最後の「今年の将棋界は明るい?」に、佐藤九段は堂々と○を挙げた。

将棋指しの腹のうち

先崎 学

文藝春秋

 

佐藤康光九段も登場する、先崎九段の新刊は「メシから見た将棋界の真実」

2020年1月22日 発売

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