1976年作品(95分)
東映
2800円(税抜)
レンタルあり

 六〇年代後半に隆盛を極めた東映任侠映画も、七〇年代に入ると客が入らなくなる。そうなると、時代劇と同様に正反対の作品を送り出してくるのが東映京都の特徴だ。

 それが、『仁義なき戦い』にはじまる「実録路線」だ。戦後の実際にあったヤクザの抗争事件を題材にした一連の作品では、任侠映画での自己抑制的な主人公たちは消え、欲望と野心のままに暴力の世界に生きる男たちの姿が、荒々しいタッチで描かれていった。

 そうした中で頭角を現したのが、菅原文太、松方弘樹、そして千葉真一である。

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 それまでの千葉はテレビシリーズ『キイハンター』などでのアクションで知られ、任侠映画ではナイーブな二枚目の芝居をしていたが、『仁義なき戦い 広島死闘篇』で粗暴な愚連隊・大友勝利を演じてイメージを一新、ワイルドさを前面に出していくようになる。ただでさえ卓越した運動神経と強靱な肉体の持ち主の千葉が暴れん坊を演じるものだから、劇中では彼のことをもう誰も止められなかった。

 そんな「止められない千葉」を堪能できるのが、今回取り上げる『沖縄やくざ戦争』だ。

 舞台は沖縄。日本返還により本土からヤクザの大組織が乗り込んできたため、地元ヤクザは大同団結してこれに対抗する。千葉が演じるのは独立派のリーダー格・国頭だ。

 とにかくこの男、徹底した武闘派志向で、暴力そのものが好きでたまらない。冒頭から、登場するなりランボーのようなタンクトップと迷彩ズボンに身を包み、ムキムキの肉体を見せつけながら、敵対する組織の居酒屋に乱入、凄まじい勢いで破壊していく。

 ただ、これはあくまでもデモンストレーションに過ぎなかった。その後も、国頭は圧倒的な暴れ方で物語を引っ張っていく。主人公・中里(松方弘樹)の子分(室田日出男)を縄張り荒らしのために制裁する際は、睾丸をペンチで潰させ、その光景をアイスキャンディを食べつつニタニタ笑いながら眺めていた。

 特に凄いのは物語中盤。キャバレーで豪勢に遊ぶ本土のヤクザを威嚇するため、国頭は上半身裸になりテーブルの上で延々と空手演武を披露、さらに店を出てきたところで轢き殺す。そしてそのことを「下手すれば戦争だよ!」と幹部会で注意されると、足の裏を掻きながら「戦争、だ~い好き」と楽しげに笑うのだ。この時の千葉の無邪気な笑顔は、まるで少年。だがそのことでかえって、決して理屈が通じない恐ろしい存在として映し出されることになった。

 自らを抑制しない男による強烈な暴力。千葉真一だからこそ演じられる役柄だった。