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「お前ら金持って集合!」ホスト・東城誠をローランドにした、冷酷な才能とは何か?

2020/01/31
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 トンチの利いたことを、迅速に、簡潔に、わかりやすくみんなに伝える才能は当然、大喜利番組(※4)だけではなく、古くは小学校の国語のテストから、就活面接から、ちょっとウィットに富んだ会話まで、色々なところで役に立つ、人生を豊かにするものではある。ただ、それが人間の魅力としてとても限定的なのは、潔く堂々と言葉を発する行為の後ろにある才能が冷酷なものであるからだ。脳の反射神経が良いことは一見格好がよく、自信が必要で、また頭の良さを指し示すものではあるけれど、細部を切り捨て、曖昧さを切り捨て、ゆらぎを切り捨てる態度は、人の自然なあり方から考えれば暴力的だ。

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熱心な通い客には接客も丁寧だともっぱらの噂だった

ローランドの著書『俺か、俺以外か

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「お前ら金持って集合!」が決め言葉で、乱暴かつ冷たい印象があったローランドこと当時の東城誠は、実際は熱心な通い客には接客も丁寧だともっぱらの噂だった。金を使う客のテーブルにしかつかないといった哲学も、身体を売って作ったお金を使う女の子の扱いが、安い金で見物に来る客と同じではアンフェアだという哲学によるものらしい。それは一見非の打ち所がない意見なのだけど、人って案外複雑で、そんな複雑なところに目を向けてはビジネスなんてできたことじゃないわけだから、ある意味で色々なものを視界から遮断するコツがなければ勤まるまい。