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「お前ら金持って集合!」ホスト・東城誠をローランドにした、冷酷な才能とは何か?

2020/01/31
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明快な答えを言ってくれる人ばかりが人気を集める世の中で

 なんでみんないつの間に、そんなに大喜利的なものが好きになったんだろうか、と思う。学校のテストで簡潔かつ決まり切った答えが必要な問いに対して、ああでもないこうでもないと答えにもなっていないようなことを示して見せるのが文化だったはずで、それをみんな味わっていたのではなかったか。わかったようでわからない映画も、不条理劇も、比喩ばかりの歌詞も長い小説も、ある意味では大喜利とは対極にある。大喜利が面白いのは本来であれば答えのないものに正解があるようなふりをしてはっきり答えるからだけど、それはちょっと学校のテストでみんなが演じざるを得ない三文芝居と同じような浅はかさもあるのだ。

©iStock.com

 ああでもないこうでもないは全てすっ飛ばして、明快な答えを言ってくれる人ばかりが人気を集めるこんな世の中はまるで、みんなが人間の複雑さに嫌気がさしてしまったみたいな怖さもある。そして今後みんなが、絶対に正解や答えがないはずの問題に対して、大喜利的に、あたかも正解があるように芝居を打つようになってしまうのではないかという不気味さも。

※1 キャバクラ嬢でもホストでも、本当にトップオブトップの売り上げ記録を持っている人は意外と大阪に多い。ホストで言えば楓十座、キャバ嬢で言えば門りょうなど。

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※2 ホストクラブ専門誌は、ホスト好きのおねーさんたちだけでなく、お兄系ファッションに憧れる男子高校生らにもそれなりに読まれていた。代表的なものは「HOST MAGAZINE」や「Yukai」など。なかなかナルシスティックな痺れるポーズでホストたちが撮影に挑むのだが、見るに耐えるのは3割程度。

※3 ホストの稼ぎ時の一つである誕生日イベントは、もちろんそのホストを指名する客が札束をもって集まるが、それ以外にも親交のある同業がお祝いのシャンパンを開けに来る。同業のホストは馴染み客を一人連れてやって来る場合が多く、この時お会計はホストが持つため、ホストの客としてはお金をかけずに飲めるチャンスにして、「こいつは連れ歩いても恥ずかしくない」と思われている証拠なので、同業に誘われるのを喜ぶ女子は多い。

※4 最近では『笑点』だけでなく、ダウンタウンの松本人志がチェアマンを務める大喜利を競う番組『IPPONグランプリ』などが人気を集めている。OECDの学習到達度調査で日本人の読解力低下が顕著というニュースを受け、松本氏が「学校の授業に大喜利を取り入れるのも良いかもよ」というツイートをしていた。たしかにお題の文を読解して正解のない答えを出す訓練は、読解力向上につながるかもしれないが、昨今の若者の様子を見ると大喜利的な力はむしろそれほど衰えていないように思える。

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