何という素晴らしい、ロマンに満ちた本のタイトルなんだ! 読む前から期待で興奮した。私が中学生の時、インディ・ジョーンズの映画を初めて観て探検、冒険、考古学に憧れた。命がけで未知の世界を探検する考古学者になりたいと思った。その頃、母親が私の誕生日にインディ・ジョーンズが被っているカウボーイハットをプレゼントしてくれたことを思い出しながら読み進める。
著者が縁あって関わることになった猿神王国の探検史の話から物語は始まる。何世紀にも渡ってたくさんの人物が中米ホンジュラスの失われた都市、猿神王国を探してジャングルに分け入る。だが劣悪な環境に逃げ帰ってしまう者や、そもそも行っていないのに行ったことにして世間に発表してしまう者など、昔の文献や資料を調べれば調べるほど困惑してくる。ただ一人の人物が辿り着けた可能性があるに過ぎなかった。
私も五年前にNHKの協力で、陸路の無いパプアニューギニアのジャングルの奥地の洞窟を解明する活動にガイドとして同行した。ジャングルの環境は飛んできて刺す蟻など一日中何かに刺されて全身が痒くなる。とくに睾丸が我慢できないほどの痒みで夜も寝られない。湿度は一〇〇%に近く、気温は四〇℃以上、何もしなくてもそこにいるだけでどんどん体力と気力が失われていく劣悪な環境だった。
著者を含めた考古学者、元麻薬密輸人、ジャーナリスト、元軍人などいろいろな立場の人間が目的を持って失われた都市を探しにいく。探検以前の人間模様が面白い。またライダー観測という飛行機に搭載した機械から地上に向かってレーザーを照射して地形を探るハイテク機器を使用してジャングルの木々に覆われて隠れている遺跡を探すという調査方法は実に興味深い。私も未踏の洞窟を探すときにグーグルアースで地形を見て目星をつけている。
苦難を乗り越えて最後には幸運を掴み、無事彼らは帰還することが出来るのだが、実はこのあと恐ろしいリーシュマニア原虫由来のウイルスに感染してしまっていることを知る。
一番驚いたことはこの探検を祝福してくれる者ばかりではなく、誹謗中傷する者が多かったことだ。だがそれでもほとんどのメンバーが再び現地に向かい調査を続けていることに、共感と深い感銘を覚える。
猛毒のヘビ、ジャガー、そしていろいろな感染症が待っているのに、それでもなお行く。なぜ行くのか? それは、知りたい、見てみたいから、それだけだ。探検家の胸にある行動の理由は、極めてシンプルなのだ。
ダグラス・プレストン/1956年マサチューセッツ州ケンブリッジ生まれ。アメリカ自然史博物館にライター兼編集者として勤務し、プリンストン大学でライティングを教えた。「ナショナル ジオグラフィック」等に寄稿。著書に『屋根裏の恐竜たち――世界最大の自然史博物館物語』など。
よしだかつじ/1966年生まれ。洞窟探検家。国内外含め1000以上の洞窟を探検。TBS「クレイジージャーニー」などで話題に。