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「地球も丸いよ」「お母さんに会いたい」

 さらに翌11日に小倉北署で副署長が発した雑感により、児童たちが保護された際の様子がよりはっきりした。その内容は以下の通りだ。

「課長と係長、それに補導員の女性2人がドアの鍵を開けて4人を保護した。4児童はパジャマ姿で、6畳の部屋で一緒にテレビを見ながら遊んでいた。入ってきた捜査員に脅えたり、驚いた様子はまったくなかった。

 部屋は1DK。室内はある程度整理整頓されており、洗濯物がたくさん干してあった。こたつ、冷蔵庫、洗濯機があり、長期間生活していたものと見られる。9歳児童はしっかり者で年下3人の統制をとっていた。彼は『NHKの教育テレビも見るよ。いろいろ知っている。地球も丸いよ』などと口にしている」

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極めて異例の捜査本部設置

 この日、福岡県警小倉北署は捜査本部を設置した。それは『北九州市小倉北区内における少女特異監禁等事件』との名称で、98人体制によるもの。容疑者が逮捕され、殺人が発覚していない段階で捜査本部が設置されるのは、極めて異例のことだった。

 捜査本部が設置された際、多くのメディアは、清美さんが警察に対して実の父親が男女ふたりに殺害されたと話していることを嗅ぎつけている。そのことに関連して、たとえばある社は、捜査幹部から次のような情報を得ていた。

「片野のマンションに入ったが、芳香剤が異常にたくさんあり、明らかにおかしかった。子供のおもちゃなどは一切なく、古ぼけたタンスなど、ガラクタがいたるところにあった。タンスなどの所有物には名前など書いてなく、身元が特定されるものは一切なかった」

「電気コードを押し付けろ、叩け」「お前が殺した」

 そして清美さんの証言の概要として、次の言葉が続く。

「片野マンションの風呂場で、男女ふたりと少女が、少女の父親の遺体を解体。その後、少女はフェリーで遺体を捨てたところを見たと話している」

 ちなみにこの情報については、翌12日になると、清美さんの供述内容がさらに具体的になったものが捜査員の口から語られていた。

「『電気コードを押し付けろ、叩け』と、17歳の少女は男からそう命じられ、風呂場でぐったりしていた父親に向かって、指示されたようにやった。その後、少女は男女から『お前が殺した』と言われた。しかし、『私がやる前から父親は死んでいたと思う。その後、父親の遺体を切断してフェリーの船上から海に捨てたと男女から聞いた。自分は船に乗っていないので本当かどうか分からない』と彼女は話している」

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 じつは清美さんは、死体の解体作業に加えられ、遺棄の際には船に同乗していたことが、しばらく経ってから明らかになる。しかし、みずからの事件への関与を認めたくないという、これまで男女にさんざん脅されてきた17歳の少女なりの、自己防衛のための虚偽発言だったと推測される。

 清美さんの父親が死亡していることは、ほぼ間違いない。だが、この時期は取材するメディアだけでなく、警察内部においても情報が錯綜していたのだ。