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JR京浜東北線の“ナゾの終着駅”「大船」には何がある?――日本初のサンドイッチ駅弁とは

2020/02/03
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では、大船駅前には何がある?

 コンコースには飲食店やらおしゃれなパン屋さんから銀だこハイボール酒場まで、いわゆる駅ナカ商業施設がずらりと並んでいるのだ。もちろんコンコースは充分に広く、ふたつある改札口のうち南側を出るとその先では駅ビルのルミネウィングに通じている。とまあ、実に賑やかで華やかで、ナゾとはほど遠い立派な駅なのである。

 駅の外に出てみる。出入り口は3ヶ所あって、南改札からは西口と東口、北改札からは笠間口。人通りの流れを見ると東口に向かう人が多いようなので、とりあえずそちらについていく。階段を降りて地上に出ると、駅前広場のようなものはなく、2車線のさほど広くもない道路が線路に並行するように南北に通っている。そしてその道路の左右に何軒もの飲食店が軒を連ねている。北改札から通じている笠間口もこの道路沿い。

人通りの多い大船駅東口
こちらは北改札から通じる笠間口

 さらに人の流れに注目してみると、どうやらこの駅前の通りからさらに奥に入って行く人が多いようだ。ここでもまたついていくと、路地のような細い道が伸びていて、そこには地元感たっぷりのスーパーマーケットから八百屋さん、魚屋さんに居酒屋や定食屋などが軒を連ねている。歩いているのは地元に住んでいると思しきオジサンやオバサンはもちろん、学生と思われる若い人も含めてさまざまだ。つまりは大船駅とその周辺は実に庶民的な生活感あふれる、気持ちのいい町なのである。

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八百屋さん、魚屋さんに居酒屋や定食屋など庶民的な雰囲気が漂う駅前

「昔はね、映画の撮影所があったんですよ」

 と、つまり大船はナゾどころか老若男女たくさんの人で賑わっている、楽しげな町であった。そんな賑やかな町で見かけたオジサンに尋ねてみた。

「昔はね、この先の大学があるところに映画の撮影所があったんですよ。工場もたくさんありました。それでいっぱい人が来るようになったんです。撮影所はなくなったけど、その跡地が大学になって若い学生さんも増えた」

 そこで調べてみると、現在鎌倉女子大学のキャンパスとなっている場所にはかつて松竹大船撮影所があった。その名の通り松竹のスタジオで、1936年に蒲田撮影所から移転してきたのがはじまり、以来、長らくさまざまな作品がこの地で生み出され、その中には『男はつらいよ』シリーズもあるという。撮影所は2000年をもって閉鎖され、跡地に大学やイトーヨーカドーなどの商業施設が誕生し、今に至るというわけだ。

松竹大船撮影所(1952年撮影)。2000年に閉鎖された ©共同通信社

 ではなぜ大船に映画の撮影所ができたのか。もう少し歴史をさかのぼってみる。