文春オンライン

JR京浜東北線の“ナゾの終着駅”「大船」には何がある?――日本初のサンドイッチ駅弁とは

2020/02/03
note

 そもそもの大船駅の開業は1888年。のちに東海道線となる官設鉄道の駅として開業した。東海道線の駅は、その多くが旧東海道の宿場町の近くに設けられている。古くから人が多く暮らす町があったのだから、とうぜんのことだろう。

 ただ、大船駅は宿場町とは違う場所。周囲は民家もまばらな寒村だったという。それが変わったきっかけが1889年の横須賀線開業。横須賀線は大船駅で東海道線から分岐して横須賀方面に伸びた。戦前の横須賀は日本有数の軍港で、横須賀線は軍事輸送において力を発揮した。大動脈たる東海道線はいわずもがな。そうした重要路線が分かれている駅が栄えないはずもない。そうして少しずつ大船の町が発展して賑やかになっていった。

大船で日本初のサンドイッチ駅弁が生まれた

 大船と言えば駅弁「鯵の押寿し」で有名な大船軒があるが、大船駅開業にあわせて駅前に旅館を開業、1898年に弁当販売を開始したという。1899年には日本ではじめて駅弁としてサンドイッチを売り出して歴史にも名を残し、湘南地方の名物のひとつになった。そんな大船軒の尽力もあってか大船は“鉄道の町”として成長。そこに映画の撮影所がやってきたことで俳優らが居を構えることもあり、ますます開発が進んだのである。

ADVERTISEMENT

 そういう歴史を知ると、大船駅の周辺がかなり賑やかであることにはなんの不思議もないことがわかる。こうした歴史の古い町は近年廃れがちになる例もまま見かけるが、大船の場合は東京都心から1時間という距離もあって、ベッドタウンにもなることで賑やかさが維持されたのだろう。

 道行く女子大生に聞くと、「カフェとか安い店も多いから意外と大船って楽しい」のだとか。並んでいる店舗を見ると、チェーン店と個人店がおおよそ半々くらい。きっと、映画の撮影所時代から続く老舗の居酒屋もあるのだろう。もしかするとナゾの終着駅・大船は、歩けば歩くほど奥が深い町なのかもしれない。

忘れてはいけない「大船観音」

 と、ここで終わるとお叱りを受けてしまいそうである。大船といえば、大船観音を忘れてはいけない。東海道線の車窓から見ることもできる、真っ白くて巨大な観音様だ。これは大船駅のすぐ西側にあって、南改札から西口を出て向かう。1929年からつくられ始め、中断を挟んで1960年に完成したものだ。東海道線の車窓を眺めていて大船観音を見ると、いよいよ湘南、と感じる人もいるだろう。

南改札から西口を出て向かう「大船観音」。存在感がある
世界恐慌や戦争の影響で工事が中断されていた大船観音、1960年に完成した ©共同通信社

 もうひとつ、大船駅の東口の少し先には湘南モノレールの駅がある。ここから起伏に富んだ三浦半島の付け根を通って湘南江の島までを結ぶ懸垂式(つまりはぶら下がり)のモノレールだ。モノレールながらトンネルもあり急な上り坂もありでなかなかダイナミックなのだ。大船を訪れたなら、ぜひこのモノレールにも乗ってみてはいかがだろうか。

湘南モノレール

写真=鼠入昌史

JR京浜東北線の“ナゾの終着駅”「大船」には何がある?――日本初のサンドイッチ駅弁とは

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー