深刻なほど、自殺をしたいと考えている人も
「きっかけと言えるかどうかはわからないが、ツイッターで自殺志願者のアカウントがあることを知り、力になりたいと思った。自分も死にたい。協力できればと思った」
自殺願望者の「死にたい」という投稿をみて、DMを送ったという。やりとりをした結果、どのように感じたのか。
「最初は(自殺志願者が)言葉にしているぐらいで、(死にたいというのが)本当の気持ちではないと思っていた。やりとりする中で、本気で思っている人が少なからずいると思った」
「死にたい」とつぶやく人の中には、深刻なほど、自殺をしたいと考えている人もいる。筆者は、インターネットで自殺願望を発信する人たちを20年以上取材している。一般に知れ渡る大きな事件もたびたび起きている。
自殺願望者をツイッターで誘い出したという意味では、2017年10月末に発覚した座間市男女九人殺害死体遺棄事件がある。北島被告が事件を起こす2年前で、そう昔の話ではない。
座間事件をきっかけに、ツイッターなどのSNSでは、「死にたい」「消えたい」というつぶやきが多く、なかには深刻なケースもあることが報道されている。厚生労働省がSNS相談に本腰で取り組むきっかけにもなっている。関連するNPOも多い。
この日の被告人質問では、弁護士も検察官も裁判官も、そうした流れを知っていたか質問していないが、北島被告の話しぶりではあまり関心があったように思えない。
教員の採用試験が不合格となり、落ち込んだ
自殺志願者とのDMの始まりは、なぜ7月からだったのか。
「きっかけははっきりしないが、6月に教育実習をして、教師に向いていないと思った。7月には採用試験を受けたが、結果が出る前に、不合格で間違いないと思って、正直、落ち込む原因になった」
志望していた教員への道だが、教育実習を経験して、向いていないと考え始める。北島被告は採用試験を受験し、不合格となる。
とはいえ、北島被告が自殺願望を抱く理由はそこまではっきりしていない。ヒントは被告人質問の内容にあったように思う。それは家族や友人関係についてだ。
「自分の中では、あまり家族の中で悩みを言える関係ではないですし、友人関係も深い付き合いはないので、相談できる人はいない」