2019年9月、東京都豊島区内のホテルで、ツイッターで自殺願望について投稿していた無職の女性=江東区、当時36=を殺害したとして、嘱託殺人の罪に問われている、大学生の北島瑞樹被告(22)の公判が1月28日、東京地裁(井下田英樹裁判長)であった。この日は、被告人質問が行われ、筆者も傍聴した。
北島被告は、自殺願望のある人を殺害したことについて、「役に立ちたかった」と証言する一方で、犯行の理由について「自分の中で順序立てて言えない」などと話した。明確な意志や論理的な考えがなかったようだ。
これまでの調べによると、事件は2019年9月12日午後8時半ごろ、ホテル側からの110番通報で発覚した。キャリーケースを持った北島被告がホテルに入る様子は、ホテルの防犯カメラに映っていた。発見時、女性は衣服を着ていたが、大型の布団圧縮袋のようなポリ袋に膝を抱えた状態で入れられていた。北島被告は、ツイッターで自殺願望のある人たちとやりとりをしていた。そのうちの一人が、被害女性だった。
なるべく血が出ない方法を考えた
北島被告の証言によると、当日、ホテルに入り、被害女性が来るのを待った。そのとき「逃げ出したい気持ちと、(殺すことで)役に立ちたいという気持ちがあった。(ツイッターのDMで)楽にしてあげると言っていたが、実際に手にかける行為は恐ろしいと考えていた」と話す。被害女性を殺害するか、迷いながら待っていたということか。
被害女性は、ホテルの部屋に来ると、立っていられない状態ですぐに横になったという。そこで、北島被告は手順を確認した。
「(被害女性がなぜ自殺したいかは)詳しいことは聞いていないが、病気で、延命処置を受けたくないと言っていた。(殺害方法は)こちらから手で首を締めると言った。あちらは何も言わなかった」
「方法にこだわりはない。ナイフで刺すと血が出る。気持ちいいものではない。なるべく血が出ない方法を考えた」
自殺志願者の力になりたいと思った
被害女性が亡くなったことは脈や心音で確認したという。犯行後、北島被告は「我に返って、とりかえしのつかないことをしたと思い、気が動転した。そのときは冷静ではなかった」と振り返った。
持ってきたキャリーケースには、被害女性を入れて運ぶ予定だったが、「(遺体が)入らず、そのままにした」と答えた。そして、キャリーケースは持ち帰っている、事前に大きさは測っていないと証言した。
自殺願望をつぶやく人たちとツイッターでやりとりが始まったのは、7月中旬だった。動機は何か。