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グーグル時代に映画で畏怖させるということ

 SFの父とも言えるコナン・ドイルの『ロスト・ワールド(失われた世界)』やジュール・ヴェルヌの『神秘の島』『地底旅行』は、地球上の未開の場所を舞台にした作品を発表している。これらの作品が書かれたのは19世紀の末から20世紀の初頭で、まだ世界に未知の領域が存在していたからこそ説得力を持っていた。

 オリジナルもギラーミン版もピーター・ジャクソン版も、未開の島からコングを連れてきた。今作でも人間は未知の島でコングと遭遇するが、コングは島から連れ出されない。作中の設定こそ、アメリカ軍がベトナム戦争からの撤退を宣言した1973年だが、映画を見ている我々は2017年に生きている。今やあらゆるものがネットに繋がって検索可能になり、Google Earthは地球を覆い尽くそうとしている。そんな状況下で、あえて未知への畏怖を映画で示そうとしたのが今作なのだ。

©2017 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.,LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS,LLC AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.ALL RIGHTS RESERVED

 未知なるものがやってきて文明やシステムを活性化するのではない。未知なる場所に出かけて行って、個人が活性化され更新される。それは現代の映画が持っている機能そのものだ。

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 ジョーダン・ボート=ロバーツは、キングコングという怪獣を新たな進化の系統樹に位置付けることに成功した。と同時に、映画をアップデイトさせたのだ。これは怪獣映画=エンタテインメントの再定義であり、新たな時代の映画の再発見でもある。