新型コロナウイルスによる肺炎が急速に広がっている。中国内での死亡者数はSARS(重症急性呼吸器症候群)による死亡者数(349人)をはるかに超えた。世界各地で感染者が確認され、緊張が高まっている。

 韓国も連日、このニュース一色。韓国内では19人の感染者が確認されている(2月5日現在)。

1月30日、新型コロナウイルスによる肺炎についての会議に出席する文在寅・韓国大統領(左から2番目)©時事通信社

 韓国での感染が認められた19人のうち、武漢在住の人や、最近訪問した人は8人。残りは2次、3次感染者とされ、うちひとりは、日本で新型コロナウイルスによる肺炎を発症した人物と接触したツアーガイドの中国籍の男性だった。

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 韓国で最初の感染者が確認されたのは1月20日。武漢から観光で韓国に入国した女性だった。その3日後には中国の春節で多くの中国人観光客が訪韓するとして、「中国人入国禁止を要請する」請願文が青瓦台の国民請願掲示板に早くも書き込まれている。

店を開けていると「結局はカネか」と非難され

 26日、武漢から帰国してから1週間後の韓国人男性の感染が確認され、ソウル市内での動線が明らかになると、韓国社会は一気に警戒モードに。マスクの売れ行きは右肩上がりで増え始め、「中国人お断り」と書かれた紙を貼った食堂や、中国人だと分かると乗車拒否するタクシーも現われた。

 その時期たまたま乗ったタクシーの運転手に話を聞くと深いため息が返ってきた。

「中国人の乗車を拒否しているのはごく一部でしょう。中国人観光客は(ソウル都心の)タクシーの収入の5分の1くらいを占めていますから大事なお客さん。感染は怖いけど、簡単には断れない。早く収まってほしいですが、もし、感染者が増えて中国人の入国を拒否することになれば、しばらくはその影響の余波で収入も減る。ただでさえ景気はよくないのに厳しいです……」

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 感染者が食事した老舗店は保健所の立ち会いの下、防疫のための消毒作業後に店を開けていたが、「結局はカネか」などという非難を浴び、一時休業している。感染者の動線が明らかにされると、別の感染者が立ち寄ったとされた新羅ホテルの免税店は自ら一時休業を宣言。この他にも感染者が立ち寄ったとされる映画館やコンビニなどすべての店や施設は一時休業や閉鎖するという徹底ぶりだ。

 ある大学生は、疾病管理本部の公式資料をもとに「コロナウイルスマップ」という感染者の動線を地図にしたサイトを作成。日々情報を更新しており、アクセス数は5日間で800万回(2月4日現在)を超え、NAVERが支援を決めている。

 教会にもその余波は及んだ。韓国にはキリスト教信者が3割ほどいるといわれ、日曜日になるとソウル市内に林立する教会に礼拝に通う人々の姿が日常の風景だったが、感染者が通っていた教会ではホームページでの映像礼拝を行うという異例の処置がとられた。