新型コロナウイルスの感染が急拡大している。1月29日現在、中国国内の患者数は5,974人。132人が死亡した。

 政府は全力で感染拡大の防止に努めている。28日の閣議で新型コロナウイルス感染を指定感染症に追加することを決め、29日にはチャーター機を派遣し、武漢在住の日本人206人を帰国させた。そして30日には帰国者のうち3人が新型コロナウイルスに感染していることが明らかになった。

 本稿では、これまでに判明した事実をまとめ、現在の感染対策について解説したい。

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「コロナウイルスか検査して欲しい」という患者が急増しているという医師の目から見た「新型肺炎対策」の誤解とは? ©iStock.com

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■誤解(1)「SARSよりも『感染力』は弱いんじゃないの?」

 当初、新型コロナウイルスはヒトからヒトにはうつらない、あるいはうつるとしても、感染力は弱いとされていた。

 しかしながら、最近の情報を総合すると、感染力は決して弱くはなさそうだ。新型コロナウイルスは、咳やくしゃみを介した飛沫感染でうつる。専門家は、その感染力はインフルエンザやSARSと同等と考えるようになっている。

 ウイルスの感染力の比較には、基本再生産数という指標が用いられる。1人の感染者が、周囲の何人にうつすかを推定した数字だ。新型コロナウイルスは1.4~2.5人だ。

 インフルエンザは1.4~4.0人、SARSは2.0~5.0人だ。新型コロナウイルスとほぼ同レベルだと言ってよい。

武漢では医療従事者への感染が広がっている

 これは医療従事者も感染しているという事実とも合致する。武漢市当局は21日に15名の医療従事者が感染し、うち1名は重症と発表した。

 治療にあたる医療従事者は最高レベルの感染防御をしていただろう。それでも感染するのだから、感染力は高いと考えた方がいい。

「医療従事者の感染」については日本ではあまり報じられなかったが、英科学誌『ネイチャー』は21日に「ニュース」として紹介している。

 新型ウイルスに関する情報は厚労省が「管理」し、記者会見という形で公表する。官僚がもっとも怖れるのは、国民がパニック状態となり、収拾がつかなくなることだ。

 日本のメディアの情報ソースは役所や有識者が中心だ。有識者は政府の意向を忖度するケースもみられる。この結果、メディアが報じる情報にはバイアスがかかる。

 今回の新型コロナウイルスについては、欧米の科学誌や医学誌が参考になる。中国との距離が遠く、日本と比べはるかに影響は少ない。『ネイチャー』をはじめ、欧米の専門誌は最初から楽観視していない。

■誤解(2)「感染防止にはやっぱり『マスク』が有効なんでしょう?」

 感染を防ぐにはどうすればいいだろう。マスクがバカ売れして、在庫がなくなっているという。多くの人がマスクに期待している。では、マスクはどの程度有効なのだろうか。