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2020/01/30

 マスクの予防効果について、医療従事者を対象として多くの研究がなされている。そして、一定の効果があることが確認されている。

 2017年、シンガポールの研究者たちは米国臨床感染症雑誌に、過去に発表された論文をまとめたメタ解析の結果を発表し、医療従事者がマスクを装着することで、インフルエンザ類似の感染症を66%低下させると報告している。SARSでは87%も低下させたという。

  ただ、このような研究成果を一般人に当てはめるには注意が必要だ。そもそも、使っているマスクが違うし、医療従事者は訓練されているからだ。

 医療従事者が新型ウイルスに感染した患者を治療する際、N95マスクを用いることが多い。これは米国の労働安全衛生研究所が定めた規格を満たすもので、きちんと装着すると、フィルターを介して、0.3マイクロメートル以上の粒子を95%以上捕捉する。

 筆者も装着したことがあるが、肌に密着し、息苦しさを覚えた。市販のマスクとは密着度が異なり、粉塵の吸入予防効果は全く違う。

 米国では医療機関にN95マスクを導入する際、医療スタッフに対して顔面への密着度を評価するためのフィットテストが義務づけられている。その後も年に1回の頻度で行う。

日本のドラッグストアではマスクが品薄状態。その効果は? ©AFLO

一般人のマスク着用のエビデンスは?

 では、市販のマスクを一般の方が装着したときには、どの程度の効果が見込まれるだろうか。私が調べた範囲で、このことを検証した論文は少ない。

 2010年にフランス、2011年にタイの研究者が、家庭内でのインフルエンザの感染を減らすため、マスク着用を推奨したが、効果はなかったと報告している。

 医療従事者と違い、一般人を対象とする臨床研究は実行が難しい。一般人のマスク着用については、まだ十分なエビデンスがあるとは言えないが、多くの医師は、ほとんど効果はないと考えている。

 では、なぜマスクをするのか。それは自らが病原菌をうつされないようにするためではなく、自らの口から唾液を飛散させるのを妨げ、周囲にうつさないようにするためだ。つまり、エチケットということだ。マスクの効果を過信してはいけない。

■誤解(3)「中国以外への海外旅行も控えたほうが良い?」

 私は問題ないと考えている。これまでに中国で亡くなった患者の平均年齢は73歳で、6割が何らかの持病を抱えていた。持病がない現役世代はあまり心配しないでいいだろう。

 一方、持病がない53歳の死亡例もあり、「絶対に安全」とは保証できない。要はリスクとベネフィットをどう考えるかだ。