昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

ハマりすぎ注意!? 他人の日記や手帳  400冊の秘密を覗ける「手帳類図書室」

2020/02/12

source : CREA WEB

genre : ライフ, ライフスタイル, 読書, アート

 東京は美術館や博物館の宝庫。話題のアートや貴重な展示が集まる大型施設のみならず、ひとつのジャンルに特化した“マニアック”なミュージアムもたくさん!

 この連載では、東京中のありとあらゆる面白スポットに精通するコラムニストの辛酸なめ子さんが、今、注目の“マニアック”ミュージアムをご案内します。


約400冊の手帳や日記が読み放題

手帳類図書室にて、辛酸さんがまず手に取ったのは、看護の仕事をしていた20~30代女性の手帳。その中には、秘密の日常が……。

 電車の中で手帳やノートを広げている人がいると、つい横目で見てしまう……そんなかたは私を含めて結構いるのではないでしょうか。

 参宮橋の素敵なギャラリー「Picaresque(ピカレスク)」の奥の白いカーテンを開けると、そこには知る人ぞ知る秘密の空間があります。

「手帳類図書室」は、あらゆる手書きの手帳類を収集する志良堂正史さんのコレクションを閲覧できる希有な施設。1時間1,000円で他人の手帳を読むことができます。

 椅子は4席ありますが、ときには待ちが出るほどの人気で、口コミで話題になっているようです。

ギャラリーPicaresque入口。

「この手帳類図書室には約400冊の手帳や日記があります。まだ1,000冊自宅にありますが、それは上級者向け。読みやすいものがこちらにあります」と、志良堂さん。

 最初、20代男性の手帳を手に入れたとき、想定外のおもしろさに感動したことからコレクションが始まったそうです。初期の頃は一冊1,000円で買い取っていたのが(必要なときは返却可能)、最近は寄贈という形で手帳を収集しているとか。持ち主が手帳類図書室での展示を了承しており、プライバシーのトラブルが起きないよう最大限配慮されたものが、手帳類図書室で読めるというわけです。

写真右奥、白いカーテンの向こうに手帳類図書室がある。

「この前もスーツケースひとつで海外に行きたいという女性が、手帳を何冊も持っていくのは無理だけど捨てたくない、という理由で寄贈の連絡をくれました。

 実家に残して家族に見られるよりも、知らない人に見られる方が抵抗ないのでしょう。

 手帳がずっと家の中で所定の位置を占めているのが気になって、持って来られるという方も。手帳にとってここがちょうどいい場所なのかもしれません」

こちらが手帳類図書室の閲覧スペース。全4席のこじんまりした部屋だ。

 たしかに家の中のスペースを占めているけれど捨てづらい手帳類。閲覧に耐えられるかわかりませんが、私も今度寄贈したいと思いました(その後、郵送)。

「インスタにたまに手帳をアップする人がいますが、人に見られる前提で映え重視で書かれた手帳が多いです。この図書室の手帳とは対照的で、映える手帳は書くのが大変そうです。

 でも、ここに来た人からは、自然体の手帳を見て気が楽になった、という感想をもらいます」と、志良堂さんはおっしゃいます。

志良堂正史さん。

 いっぽうで、人の手帳の念に当たったのか、体調に異変を感じる人も。

「頭が痛くなったとか、うっとなった、という感想もありました。誰かに見せる目的ではない整っていないノートを集中して読んでいたら、他人が流れ込んでくるような感覚になるのかもしれません」

「Picaresque」主宰の松岡詩美さんによると「手帳に入り込みすぎたのか、たまに出口がわからなくなって、別のドアの前に佇んでいるお客さんとかいますよ」とのこと。

 夫婦やカップルで来て、女性の方がハマってしまい一日手帳を読みふけって、旦那さんや彼はカフェや公園で時間をつぶすという場面もあったそうです。女性の方が他人の人生に共感したいのかもしれません。