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映画が出来たら「最初に妻に見せて自信をつける」

 新海監督は私生活では、『雲のむこう、約束の場所』のころから交際していた舞台女優の三坂知絵子さんと結婚している。二人のあいだに生まれた娘の新津ちせさんは子役として活躍し、音楽ユニット・Foorinにも参加、昨年には「パプリカ」が大ヒットし、日本レコード大賞を最年少(9歳)で受賞した。妻の三坂さんはかつて別名義でライターとしても活動していた。個人的な話で恐縮だが、筆者も間接的ながら一緒に仕事をしたことがある。そういえば、『天気の子』では、帆高が須賀の経営する編集プロダクションでライターの見習いのようなことをしていた。それもいまどきありがちなネットで適当に情報を集めて記事を書くというのではなく、資料を集めたり、取材して録音した音声を文字に起こしたりと、ちゃんとした手順を踏んでいたのが意外であり、筆者自身、若いころに似たようなことをしていただけに懐かしくもあった。

『天気の子』(2019年)

 新海監督は『君の名は。』の公開時のインタビューで、《毎回、最初に妻に見せて自信をつけるというのはありますね。いちばん近くにいてくれる存在ですが、『面白いと思うよ』とか、そういう言葉が欲しいだけなんです。いつも、僕の作品のファンでいてくれると思います》と語り、夫人の存在の大きさをうかがわせた(※7)。ひょっとすると『天気の子』のくだんのシーンは、監督が夫人からライター時代の体験談を聞いていて、それを反映したものなのではないか……ふと、そんなことを思った。

※1 『天気の子』パンフレットvol.2(東宝営業事業部、2019年)
※2 『キネマ旬報』2019年12月下旬号
※3 『週刊文春』2017年6月8日号
※4 『週刊ダイヤモンド』2016年10月8日号
※5 『キネマ旬報』2019年8月上旬号
※6 『広告批評』2002年5月号
※7 『女性自身』ウェブサイト2016年9月15日配信