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藤井聡太七段の「朝日杯将棋オープン3連覇」はどれだけすごい記録なのか

いよいよ準決勝、決勝戦。過去の名棋士と比べてみると……

2020/02/10

局が進むごとに報道陣が増えていった

 七番勝負は羽生の3連勝スタートで「もはや永世七冠達成間違いなし」と誰もが思ったが、そこから渡辺が底力をみせ、タイに戻す。筆者は第4局から7局まで現地の控室を訪れていたが、局が進むごとに報道陣が増えていったことが思い出される。このシリーズは、運命の最終局を制した渡辺が史上初めて永世竜王の資格を得た。

 続く第22期で挑戦者に名乗りを上げたのは森内俊之九段。第17期で渡辺に竜王を奪われて以来のリベンジ戦だが、このシリーズは渡辺の良いところばかりが出た。第3局で出現した渡辺の鮮烈な寄せは、今でも語り草である。結果としてスイープを食らった森内がリベンジを果たすのは、2013年の第26期まで待つことになる。

 第23期には再び羽生が挑戦に名乗りを上げたが、出だし2局は渡辺の勝利。続く第3、4局は羽生が制してタイに戻したが、第5、6局を制した渡辺が竜王7連覇を達成し、以降は9連覇まで伸ばした。羽生が永世竜王の資格を得て永世七冠を達成するのは2017年の第30期であり、その相手は奇しくも渡辺であった。

今期、驚異的な勝率をあげている渡辺明三冠 ©文藝春秋

この両名以外にタイトル戦の2桁連勝を記録したのは……

 そして渡辺の棋王戦10連勝は、2013年の第38期第2局から第41期第1局までとなる。第38期で自身初の棋王位を獲得し、それからはかつて自身が竜王戦で見せたような防衛戦での強さを発揮している。連勝記録こそ止まったが、タイトル戦連覇記録は現在まで続いており、5連覇を達成した第42期に永世棋王の資格も獲得した。

 その翌年度となる2017年度は、渡辺の棋士人生においてもっとも成績が落ち込んだ年(自身初の年度勝率5割切り)だが、年度末の2018年3月に、3勝2敗のフルセットで辛くも棋王を防衛した。

 もしここで渡辺が棋王を失っていたら無冠に転落していたが、それは2004年の自身初タイトルとなる竜王獲得から続く、連続タイトル保持記録が13年3ヵ月で途切れることを意味していた。連続タイトル記録は羽生の27年が圧倒的1位だが、「初タイトル獲得からの連続」となると、こちらは渡辺の独壇場である(2位は木村義雄十四世名人の9年6ヵ月)。そして無冠の危機を脱したここ1、2年の渡辺の活躍ぶりについては、改めて触れるまでもないだろう。

 

 この両名以外にタイトル戦の2桁連勝を記録したのは、谷川浩司九段が王将戦で10連勝(92年の第41期第2局から94年の第43期第2局)を達成した1回のみだ。タイトルを長く持ち続けた大山康晴十五世名人と中原誠十六世名人は、意外にも2桁連勝を記録していない。