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将棋のプロを目指して……沖縄出身の知花賢さんが18歳で異例の奨励会入りした理由

将棋のプロを目指して……沖縄出身の知花賢さんが18歳で異例の奨励会入りした理由

全国支部名人・知花賢さん33歳に聞く #1

2020/02/14

 トッププロの対局とは別に、注目を集める将棋の対局がある。主要大会で好成績を挙げたアマチュアが、プロ公式戦に挑む「プロアマ戦」だ。

 タイトル序列1位の竜王戦にもアマ枠があり、今期は6人のアマが出場している。昨年、東西対決で“アゲアゲさん”こと折田翔吾さんを破って全国支部名人に輝いた知花賢さん(33)もその1人。初戦では高野秀行六段に勝って、次は2月15日に青野照市九段戦を控えている。

 知花さんは沖縄県那覇市で育ち、高校卒業後に上京し18歳11か月で奨励会に3級入会。年齢制限ギリギリの26歳の誕生日に三段昇段を決め、三段リーグを5期戦って退会したという変わった経歴を持つ。そんな知花さんに、奨励会時代や将棋講師として生計を立てる日々について聞いてみた。

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(前後編の前編/後編を読む)

沖縄県出身者初の棋士を目指していた知花賢さん

◆ ◆ ◆

竜王戦の持ち時間は5時間

――竜王戦6組では高野六段に勝利しました。奨励会三段時代に加古川青流と新人王戦、アマになってからは朝日杯でプロ公式戦を経験していますが、いずれも持ち時間は短い棋戦です。持ち時間5時間の竜王戦は未経験でやりにくくなかったでしょうか。

知花 いえ、1時間とか短い持ち時間ですと、緊張して頭が働かないうちに終わってしまうような気がして、自分としてはやりにくいです。5時間は初めてでとても楽しみでしたし、勝ちたいと思っていましたね。

――1時間しか使わずに勝ちましたが……。

知花 相手の持ち時間も考えているし、1時間の持ち時間とは全然違います。後でもっと考えたいときには時間がたくさん残っているという心の余裕も大きいですね。

 

将棋は強いほうが勝つと思っている

――高野六段との対局に向けてどんな準備をしましたか?

知花 前日は練習しようと、都名人戦の予選に御徒町将棋センターに行きました。賞金大会として有名で、強い方が参加するのです。初戦で、元奨励会三段の方と当たって負け。たった1局で終わってしまい、別の奨励会時代の知り合いとランチして帰りました。気を取り直して、家で勉強しました。

 高野六段が今期好調なのは知っていて、どうして好調の先生と当たるんだと少し思いましたね。得意戦法が矢倉のようなので、矢倉の研究をしました。でも、当日、振り駒で自分が先手になって。あれ、相手が矢倉にできるかどうか、こちらに選択権があるのではと。矢倉を教わるつもりが、逃げて角換わりに。いや、全然対策できてないですね。

――先後どちらの場合も考えて入念な準備をするタイプではない?

知花 相手の対策はあまりしないです。将棋は強いほうが勝つと思っていて、自分が強くなればいいと思っていました。奨励会時代というか、入会前からずっとそうです。準備不足でひどい将棋を指して、反省したこともあるのですが……。

――次戦、青野九段戦に向けては?

知花 青野九段は優しい先生で、記録係をしていて終電がなくなったときに夜食代をいただいたことがありました。お世話になった先生に教えてもらえるのは楽しみです。