いまから30年前のきょう、1987(昭和62)年7月15日、仙台市営地下鉄・南北線の富沢~八乙女間が開業した。仙台市周辺では戦後、市内北部から泉市(現・仙台市泉区)にいたる地区が急速に宅地化し、朝夕の通勤時間帯には道路の混雑も激しさを増す。地下鉄建設はその解決のために計画された(和久田康雄『日本の地下鉄』岩波新書)。地下鉄開業はちょうど、仙台藩祖の伊達政宗を主人公とするNHK大河ドラマ『独眼竜政宗』の人気から、仙台を訪れる観光客が急増していたタイミングと重なった。
仙台の地下鉄では、開業当初より運転士がドアの開け閉めなども行なうワンマン運転が実施されている。そのため、ホーム全体を監視しやすいように、全駅が直線の島式ホームとなったほか、車両の運転台にモニターが置かれ、ホームのカメラからの映像が伝達されるシステムが採用された。運転に関しても、自動列車運転装置(ATO)により、ボタンひとつで発車から停車まで制御が可能となった。鉄道ファンとして知られた作家の宮脇俊三は、開業まもない南北線に乗車し、運行中の列車の運転台をつぶさに観察している。その際、運転士が主ハンドルをまったく使わないのをいぶかしみ、あれは何のためにあるのかと仙台駅の駅務室で訊ねると、「車庫への出入りのときだけですね、主ハンドルを使うのは」との答えが返ってきたという(宮脇俊三『車窓はテレビより面白い』徳間書店)。
南北線はその後、開業5周年を迎えた1992(平成4)年7月15日には、八乙女からさらに北へ泉中央まで延伸された。2011年3月11日の東日本大震災では、南北線の全線で列車運休となったが、3日後には富沢~台原間で折り返し運転を再開、4月29日には全線が復旧している。震災時、建設中だった新路線の東西線の工事も一時中断を経て同年6月に再開、2015年12月6日に八木山動物公園~荒井間が開業した。