きょう7月19日は、将棋棋士・藤井聡太の15歳の誕生日である。将棋を始めたのは5歳のとき。10歳のときに詰将棋解答選手権で上位入賞をし、11歳で養成機関「奨励会」初段の最年少記録をつくったころから、一部関係者のあいだでは次の名人と言われていたという。藤井が12歳の時点で「最年少四段の記録を作るかもしれない」と書いたのは、一昨年亡くなった元棋士の河口俊彦である(『羽生世代の衝撃―対局日誌傑作選―』マイナビ出版)。はたしてその期待どおり、藤井は昨年9月3日、奨励会の三段リーグにおいて優勝、14歳2ヵ月の史上最年少でプロ棋士となる四段昇段を決めた。

 プロデビューしてからは、周知のとおり連勝に連勝を重ねた。去る6月26日に行なわれた第30期竜王戦決勝トーナメントで増田康宏四段を破り、将棋の公式戦連勝記録を30年ぶりに更新する。このあと7月2日の同トーナメント2回戦で佐々木勇気五段に敗れたとはいえ、続く6日の名人戦順位戦C級2組で中田功七段、11日の加古川青流戦トーナメント3回戦で都成竜馬四段をあいついで破り、14歳を連勝で終えた。12日には大相撲名古屋場所を観戦し、打ち出し後に横綱・白鵬と対面して、一瞬、あどけない表情をのぞかせたのが印象的だった。

6月26日に増田康宏四段を破り、連勝記録を塗り替えた ©文藝春秋

 藤井と対局した棋士たちは口ぐちにその年齢離れした才能に感嘆している。去る4月に非公式戦で藤井と対局して敗れた羽生善治は、「まず四段になろうと思ったら最低限の定跡やセオリーを知っていないと話になりません。(中略)それらをきちんと押さえるだけで二十歳くらいになっていてもおかしくないものです。ところが、藤井さんは十四歳でほとんど全てに対応している。ものすごいことです」と舌を巻いた(『文藝春秋』2017年8月号)。しかし、それでもまだ15歳になったばかり。羽生は同じ記事で「当然ですけど、勝っていけばいくほど強敵と対戦することになりますから、そんなに簡単には勝てなくなるはずです。これからの戦いが本当の試金石になると思います」とも語っている。藤井劇場の本番はやはりこれからということだろう。

佐々木勇気五段に敗れて連勝はストップしたものの、活躍は続く ©文藝春秋