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音楽では原田芳雄と荻原健一に影響を受けていた

――なかなか想像できない光景ですね(笑)。そうした松田さんの様々な一面を知っている崔監督にとって、「音楽家・松田優作」という存在は、どのように見えていたのでしょうか。

 音楽の面でも、優作にとって非常に大きな存在だったのは、やっぱり原田芳雄だと思います。芳雄さんというのは、ライブを見ていただいたらよくわかるように、とても素敵なシンガーでもあるわけですよ。それを優作は目の当たりにして、体感してるわけで。だから音楽的には、まず芳雄さんを踏襲していった。で、そこにもう一人の要素が加わった。彼のライバルのような存在であった男は、もっと自由に歌を歌ってたわけです。それが萩原健一だったと思うんですね。

マイクを持つ松田優作 写真 渡邉俊夫

 でも優作はその後も感覚的に新しいものに触れて、それを自分の音楽へどんどん取り入れていった。ジャーマンテクノも、クラシックも。そうやって、原田芳雄やショーケンの後追いをするのではなく、松田優作独自の音楽世界を築き上げていったんです。

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――その変化を、崔監督も間近でご覧になっていたんですね。

彼に恥じることのない生き方はできるんじゃないか

 優作のライブはほとんど見てますけど、よく覚えているのが、六本木にちょっと変わったカフェバーがあって。そこでのライブというのは、とくに告知なんかしないんだ。当時流行っていたやり方なんだけど、たまたまいた客だけが聞けてね。そこでやっていたときが、一番グルーヴしてたかなあ。本当に、「ああ、優作の音楽だ」って。客はせいぜい15、6人だよ。「お前さ、もう少し入ったほうがいいだろ?」と言ったら、「いいんだ、これで」と。「できれば客はいなくていい」みたいな。僕は心の中で、「じゃあ、俺も呼ぶなよ」と思ったけどさ(笑)。

――「メモリアル・ライブ」では、そうして築かれていった松田優作さんの音楽を、原田芳雄さんや水谷豊さん、内田裕也さんらが歌い上げています。

 僕もライブを構成しながら、死して優作が残していったものを引き継ぐことは非常に困難だけれど、彼に恥じることのない生き方をすることはできるんじゃないかと思いました。あの舞台に立った出演者たちは、顔も違えば考え方も違うし、仕事の中身も全然違う。でも、そんな私たちがクロスしていく上でのポイントとして、松田優作はものすごく強い存在だった。それこそが、あの「メモリアル・ライブ」のすべてだったんだろうと思います。

撮影=鈴木七絵/文藝春秋

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