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「ごめんなさい。ごめんなさい」目黒女児虐待死事件――結愛ちゃんへの暴行と、壮絶な“DV支配”の全貌

「ごめんなさい。ごめんなさい」目黒女児虐待死事件――結愛ちゃんへの暴行と、壮絶な“DV支配”の全貌

優里被告はなぜ手記を出版したのか?

2020/02/18
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 今年1月半ば、東京拘置所でアクリル板越しに面会した時、優里は私にこう述べた。

「彼の影響は、まだ残っていると思います。今日も包丁を持った雄大が私を襲ってくる夢を見ました。カッターナイフを持っている時もある」

わずか2年で構築された“支配”の関係

 逮捕から1年8か月が経った今も、雄大への恐れの感覚が残る。なぜこのような色濃い支配が、入籍してからわずか2年間ほどの間に構築されたのだろうか。

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 手掛かりは、結愛の実父である前夫との間の苦い記憶だ。高校卒業後間もなく同学年同士で結婚した前夫は結愛の誕生後も元来の浪費癖が抜けないばかりか浮気をして、14年、優里の方から離婚を求めた。離婚届を書かせて立ち上がった時、男は性行為の際のおとなしさを揶揄する暴言を吐いた。

「お前はマグロだからな」

 手記には戸惑いが記されている。

〈なんでそんなこと言うの、なんで笑っているの、好きな人と性行為をする時、積極的になれないことがそんなにダメだったの?〉

ノートに書き記された肉筆の日記の一部。結愛や家族に謝罪する優里の言葉が書き連ねられている。

「楽しい記憶なんて一つもないような寂しい人生」

 心の傷を癒そうとその後、愛のない相手と関係を持ったこともある。だが前夫の影も消えない。前夫は養育費を払わないどころか、金をせびった。脅し口調なので断れない、という優里の身の上話に耳を傾けてくれ、「利用されているだけ」と気づかせてくれたのが、当時勤めていた夜の店のボーイ、雄大だった。

 岡山県出身で北海道育ちの雄大は東京の大学を出て大手企業に就職。7年ほど勤めるがなじめず、札幌に転勤した後に退職した。転じて働いた歓楽街の知人の伝手で、香川県の店に働くようになっていた。

 就職先では挫折した雄大だが、優里にとっては都会的で物知りな男性と映り、結愛と自分を導いてほしい、と思うようになっていた。

〈結愛には私みたいにデブでブスで、人に利用されて捨てられるつまらない人間になってほしくなかった。彼の言う通り、私みたいに友達が少なくてまわりからバカだと思われ、振り返れば楽しい記憶なんて一つもないような寂しい人生、結愛には絶対に歩ませたくなかった〉

 しかし、今度はその雄大が、優里の“弱いところ”につけ込むようになる。