山本幸三 地方創生担当相
「今治市が土地で36億円のほか積立金から50億円、愛媛県が25億円を負担し、残りは加計学園の負担となった」

『週刊文春』 7月27日号

 名言、珍言、問題発言で1週間を振り返る。安倍晋三首相の“腹心の友”が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設に関する疑惑が続く中、『週刊文春』のスクープが飛び出した。

 獣医学部新設をどの学校法人が担うのかを決める公募が開始された今年1月の2カ月前にあたる昨年11月、国家戦略特区を担当する山本幸三大臣が日本獣医師会の役員に対して「四国」「加計学園」に決めたと通告していたという議事録の存在が明らかになった。

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 記録が事実なら、「加計ありき」の選定を否定する政府の説明と真っ向から矛盾する。日本獣医師会の幹部は「この文書は面会に同席した幹部が直後に作成したもので、出席者全員で内容を確認している」と話している(NHK NEWS WEB 7月20日)。菅義偉官房長官も「怪文書」とは切り捨てられないだろう。

山本幸三地方創生担当相 ©共同通信社

 山本地方創生担当相は20日、記者団に対して「会合の概要は、獣医師会側の思い込みと私の発言を混同したもので、正確ではない」と語った。山本氏は「私からは『京都もあり得る』と述べた」と反論したが、議事録にあった「獣医師が不足している地域に限って獣医学部を新設することになった」「四国は、感染症に係る水際対策ができていなかったので、新設することになった」(『週刊文春』7月27日号)という発言とは食い違う。また、獣医学部を新設するなら加計学園に絞ってほしいと求めたのは日本獣医師会側だとも語っている(日テレNEWS24 7月20日)。日本獣医師会の議事録はそんなにデタラメなのだろうか?

「メモ自体はもうない。内容は覚えている」

 山本氏は反論の中で「(同席した)秘書官がメモ書きみたいに書いていた」と語っていたが、その日の夕方には「メモ自体はもうない。内容は覚えている」と語っている(朝日新聞 7月21日)。複数の人間がかかわった議事録と山本氏の記憶、どっちが正しいのだろう? 加計学園だと言わないよう「十分注意して『事業実施主体』という言い方で徹底していた」とも語っていたが(産経新聞 7月20日)、公募前ならどうしてそんなに注意をする必要があったのかもよくわからない。

 獣医学部の新設は、加計学園と愛媛県にとって長年の悲願だった。10日に行われた閉会中審査で、加戸守行前愛媛県知事は「愛媛県にとっては、12年間加計ありきだった」と証言している(産経新聞 7月17日)。少子高齢化に悩む今治市にとって、獣医学部が新設されることで若者が来て、街が活性化すればよかったとも語っている(産経新聞 7月16日)。

 加計学園にとっては、学部新設が国に認められれば、補助金などの形で多額の公費が投入されることになる。学校ビジネスを拡大させている加計学園だが、実際には加計学園傘下の3つの大学のうち、黒字になっているのは岡山理科大学だけで、加計学園の「事業計画」によると2015年度の収支で千葉科学大学は約4億4000万円、倉敷芸術科学大学は約6億5000万円の赤字に陥っている(『週刊文春』7月27日号)。加計学園関係者は「助成金や補助金に依存しているのが実情」とも語っている(『週刊文春』4月27日号)。

加計孝太郎氏 ©共同通信社

 愛媛県と今治市は15回にわたって獣医学部の新設を却下されたが、16年8月に担当大臣が石破茂氏から山本氏に交代したことで大きく転換した。

 獣医学部新設にあたり、今治市が約37億円の土地を無償譲渡し、総事業費の半分である96億円を愛媛県と今治市が負担することになる。しかし、総事業費の算定には疑問の声も上がっており、福田剛愛媛県議によると市議会には積算根拠となる図面などの資料が提出されていないという。昨秋には約243億円とされていた事業費が、今年3月には192億円といきなり50億円も減っており、今になって市の担当課が見積もりを始めている。また、「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表によると、今治市民一世帯あたりの負担は13万5000円に上るという(『週刊文春』7月27日号)。これで今治市は本当に活性化するのだろうか?

それにしても、獣医師会新設に対する日本獣医師会の抵抗はすごい。獣医師会とのつながりが深く、かつて「(獣医学部新設は)獣医師の質の低下につながる」(産経新聞 5月26日)とも発言した麻生太郎副総理兼財務相はどんな気分で事態の推移を眺めているのだろう?