準備に2年、資金は150万円
僕は広島大学経済学部の4年生だ。この日本一周旅をしたいと思ったきっかけは大学1年の夏、ヒッチハイクで九州一周をした時にさかのぼる。
見知らぬ人のご好意で車に乗せてもらう。僕が車に乗った場所も降りた場所も、その人たちにとっては馴染みの深い土地であり、ふるさとであったりするが、僕はまったく知らないところだった。そこが不思議だった。
日本は想像以上に広い。自分は井の中の蛙なんだな、と痛感した。井戸を出たい。もっと、外の世界を知りたい。そこで考え付いたのが、日本にある市町村すべてを廻る旅に出かけることだった。写真が好きなので、道々の光景をサイトにアップしよう。そうすれば、世界にひとつしかない、自分だけの日本地図が出来上がるはずだ……。
準備には大学2年、3年の2年間をかけた。決行時期を4年になる直前の2018年3月末とおき、その年は休学すると決めた。3年の前期までに卒論とゼミ以外のすべての単位を取り終えるようにした。
まず必要なのはお金だ。それまでやっていた大学の生協での短期アルバイトを長期にしてもらい、職員並みにほぼ毎日働いた。夏休みにはキャンプ場での泊まり込みの仕事もやった。もちろん、節約も心がけ、150万円を貯めることができた。
相棒は原付、ニコン、写真をアップするためのPC
相棒となる乗り物は原付にした。中型バイクも考えたが、価格と燃費、耐久性を考えると、原付に軍配が上がった。
持参するカメラは愛用のニコンだ。迷った挙句、望遠レンズは持たず、50ミリ1本にした。地べたを這う旅であり、写真映えする風景ばかりではないだろう。それぞれの場所で、自分が見た飾らない感じを表現したい。そのためには単焦点レンズがふさわしいと考えた。撮った写真はその日中に専用サイトにアップすることにする。
肝心のコースは月ごとに、九州や東北といった、廻る「地方」を決めた。出発の数週間前から、1日ごとに走るコース、つまりスタート地点とゴール地点を定めた。数日前から前日にかけ、それぞれの市町村で立ち寄るスポットを最終決定した。1日の目標は日の出から日の入りまで走って10市町村前後を巡ること。距離にして約200キロとなる。もちろん雨天決行だ。