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「都会の人は誤解している」全市町村一周青年が、過疎村・秘境村で見たもの

2020/02/22
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就職先は地元の写真館、将来は写真家に

 思いがけず、お祭りに遭遇した時は楽しかった。下呂温泉で有名な岐阜県下呂市では8月1日から4日まで下呂温泉まつりが行われる。ラッキーなことに、僕が訪れた3日は花火大会が開かれていた。同宿だったスイス人の大学生二人と花火を楽しみ、さらに地元の人に混ざって下呂おどりにも挑戦した。

 そうした思いがけない人との出会いも旅の醍醐味だ。楽しい話題だけではなく、重い話題もあった。僕が旅人だったからか、自らの境遇を赤裸々に語ってくれる人が多かった。僕はこの旅を通じ、無数の人たちの生き方、いや生き様に触れることができたと思っている。

 最後の市町村は鹿児島県屋久島町だった。今年の1月7日のことだ。思いがけず、海上に広がる空で虹色に染まった彩雲を見ることができた。旅で彩雲を見たことは一度もなく、なんだか不思議で、ありがたかった。幸せだなぁと思った。

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 旅の初日に怪我をしたので、最後も何かあるかと思っていたら、案の定、レンタカーを壁にこすりつけてしまい、修理代1万円をとられた。が、それくらいで済んでよかった。振り返ってみると、初日の大コケ以来、身体は快調で、風邪一つひかなかった。初日の怪我で厄が全部落ちたのかもしれない。

 こうして、全国1741市町村を巡る旅は無事完結した。学生生活は残り約1カ月。就職先は既に決まっている。地元、倉敷市内の写真館だ。ここで基礎をみっちり学び、将来は写真家になりたい。この旅で得た経験は僕のこれからの人生において大きな糧となってくれるだろう。 

 

写真=深野未季/文藝春秋

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