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『いちご戦争』は『総員玉砕せよ!』にかなり影響されてるんですよ

――水木作品のどんなところが理想なんですか?

今日 どの時代の人も受けとめることができる人間らしいところ、間抜けなところを描いているところです。水木作品は貸本時代のものも含めて一通りは読んでいて、やっぱり戦争漫画は体験者じゃないと描けないものだと思っていたこともあるんです。状況や時代が持つ細部のリアリティーは、私たち世代にはとても描けないから。でもある時、気がついたんですよね、水木作品の本当にすごいところは、戦争の悲惨さや過酷さを伝えるだけの漫画になっていないところだと。伝わってくるのは、特殊な状況でもサボったり、アホなことをする人間がいるということ。こういう、どの時代の読者も受け止めることができる人間を私も描いていけたらと思っています。

 

――子供の頃から平和教育に辟易したり、恐怖感を持っていた今日さんであっても、水木さんの作品はすんなりと入ってきた感じなんですね。

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今日 水木作品は本当に好きですね。実は『いちご戦争』は「少女たちの南方戦線」という架空戦記をモチーフにしているんですが、私の南方イメージは水木先生の『総員玉砕せよ!』にかなり影響されてるんですよ。画風はまったく違うけど(笑)。

『いちご戦争』(河出書房新社)より

――今日さんの作品は一貫して細い線で描かれていますよね。

今日 今はそれほど細い線で描いてもいませんが、他の人と比べると細い方かもしれませんね。昔は0.1ミリのペンで描いていたこともありましたけど。

――水木作品以外で、戦争表現の影響を受けたものはありますか?

今日 塚本晋也監督の『野火』。それから『アクト・オブ・キリング』という映画は最近のベストですね。『アクト・オブ・キリング』は60年代にインドネシアで起きた100万人規模の大虐殺についてのドキュメンタリーですが、ある種のフィクション性も入っている作品なんです。完全なるヒーローとか善なるものがなくて、常に物語の中に人間の葛藤とか揺さぶりが入っている。私も、ある状況で揺れ続ける主人公を描いていきたいと改めて思った映画です。