2月3日、アイオワ州で共和党と民主党の党員集会が行われ、4年に1度となるアメリカ大統領選に向けた候補者争いが本格的に始まった。
民主党では、ピート・ブダジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長が首位に立ったことが注目を集めたが、依然として、11月に行われる本選ではドナルド・トランプ大統領が優勢とみられている。
ただ、ウクライナ疑惑を抱え、米大統領として史上3人目となる弾劾裁判にかけられたこともあり、トランプ氏の再選も盤石とは言えない。
大統領選の帰趨を決するのは激戦区スイング・ステート(揺れる州)である。トランプ氏が当選を果たした2016年の大統領選挙では、アイオワ、ウィスコンシン、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、フロリダで勝利を収め、これが当選の大きな要因となった。この6州は、2012年の大統領選では、オバマ前大統領の民主党が勝利を収めていたが、トランプ氏がそれをひっくり返したのだ。
「職がないのは全て中国のせい」
トランプ氏は再選に向けてどのような戦略を練っているのか。小誌ではキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦氏と東洋大学教授の横江公美氏、朝日新聞の前ワシントン支局員の峯村健司氏の3人でトランプ氏の戦略を占う座談会を行った。
宮家 再選のためには、再びスイング・ステートを勝ち抜かなくてはいけない。これは絶対です。そこでトランプさんは何をやるか。私は、中国を利用すると見ています。6州のうち、フロリダを除いた中西部5州は、「ラスト・ベルト(錆びついた地帯)」と呼ばれる、廃れた工業地帯で、白人の不満層が多く住む地域です。彼らは外交政策への関心はありませんが、中国だけは別。ラスト・ベルトの労働者たちは中国からの輸入が増えたことで職を失い、生活が悪くなったと思い込んでいるからです。
峯村 トランプさんはこれまで有権者たちに、「君たちの職がないのは全て中国のせいだ。身の回りにはメイド・イン・チャイナが溢れているだろう」と彼らの怒りを煽ってきた。「中国はアメリカの覇権を奪ってナンバー1になろうとしている。私ならばそれを阻むことができる」と選挙戦でアピールしてきたわけです。