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あの“半地下”は「ぜいたくな貧困」を象徴している

 映画は、半地下住宅に住む失業者の家族4人が、坂の上の豪邸に住む米国帰りの若手IT企業経営者の金持ち家族をだまし、その家庭に入り込む話だ。では半地下住まいの「家族詐欺団」の犯行の動機になっている貧困とは?

 話題集中の半地下住居だが、あの映画での風景は必ずしも貧困を物語っていない。韓国で普通、半地下部屋といえば、独り暮らしか夫婦二人のいわば間借りのような狭い空間である。映画をよく見てほしい。あの半地下には成人男女4人が住んでいて、台所や娘・息子部屋、夫婦部屋など部屋数が多く、大きい。貧困家庭にしては生活空間が広すぎる。

『パラサイト 半地下の家族』 ©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

 あれは映画セットとして作られたものであって、現実的にはぜいたくな半地下、つまり「ぜいたくな貧困」なのだ。

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 現在の韓国で住居的貧困のシンボルといえば、むしろビルの屋上のバラック「オクタプバン(屋塔房)」や地上のビニールハウス、独り暮らし老人や出稼ぎ外国人の極小一人部屋、それに国家公務員試験(考試)受験のための1坪に満たないような「コシ(考試)テル」などがそうだろう。とくに「コシテル」は、若者たちがそんなところに籠りながら高級公務員という人生の開拓を目指す深刻さ、悲壮さがあって実に韓国的だ。

あんなに有能な家族がピザ屋の内職をしている理由は?

 それから、映画であの“貧困一家”がゴロゴロしながらピザの箱を折る内職をしているのがよく分からない。

 一家4人は後に金持ち家族をだまし父親は運転上手の自家用運転手、母親は料理上手のお手伝いさん、息子は英語・娘は美術の家庭教師に化けてそれぞれ入り込み、すっかり信用される。あれだけ仕事ができる“実力”があれば半地下でゴロゴロせず、その気になれば韓国には働き口はいくらでもある。

『パラサイト 半地下の家族』 ©2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED

 息子は軍隊(徴兵)生活をはさんで前後4回の大学入試に、英語はできたが失敗したという。普通なら「もう大学はあきらめて仕事についたら?」だろう。娘も美術大学を目指しながら遊んでいる。これは貧困ではありえない。『パラサイト』より1年前、同じくカンヌ映画祭でパルムドールを取った日本の『万引き家族』では、家族の一人は夜のお勤めをしていた。韓国でも稼ぎのいい夜のお勤めはいくらでもある。