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 確かに家主側の立場に立てば、自分の持ち物件が事故物件になってしまったら風評被害も含め損害は多大であるゆえ、隠したくなる気持ちもわかる。しかしここ数年でますます情報量が増えて活用価値の高まった事故物件公示サイト「大島てる」の存在によって、そういった嘘も暴かれやすい時代になった。

「亡くなられた場所はトイレです」

 現在、僕は大阪に、おそらく孤独死があったであろう事故物件を借りている。

 この物件はそもそも死因を教えてもらえなかった。物件管理の担当者には「内見をされてから、ご契約を確約されるならその際に、前の入居者が亡くなった場所のみお教えします」と言われた。冷やかしを回避するためなのかもしれない。僕は内見をした後に契約する意思を伝え、「亡くなられた場所はトイレです」とだけ教えてもらった。担当者は死因を上司から教えてもらえてなかったようで、本当に知らなかった。

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 部屋は2DKで家賃3万1000円。通常家賃6万2000円の半額である。ただし、半額なのは1年限定で、2年目からは通常家賃に戻る契約だ。事故物件の相場や契約形態は、物件や業者によって様々である。

このトイレで前入居者は亡くなった

なぜか老人の臭いが漂っている

 築50年以上の建物ではあるが、内装は完璧なほどに綺麗にされており、見た目は何も気になる箇所がない。ただ1箇所だけ、トイレからは異臭がする。それは下水の臭いとは明らかに異なる臭い。そしてどこか見覚えのあるというか、嗅ぎ覚えのある臭い……そうだ、老人の体から発される、あの特有の臭いだ。どことなく、おばあちゃんの臭いを思い出す。

 トイレは便器も壁もクリーニングされて汚れなど一切ない。一体どこからこの臭いが放たれているのだろうか。唯一考えられるのは……床下。綺麗に塗装されたトイレの床のその下である。