どんな死に方なら「心理的瑕疵」と言えるのか?
物理的瑕疵物件も心理的瑕疵物件も、不動産取引をする際には宅地建物取引業法に基づいて、事前に借主・買主にその旨を告知する義務が発生する。
ここで問題なのが、心理的瑕疵物件に関しては「入居者が嫌がるかどうか」が基準になるため、その線引きが難しいということだ。特に事故物件は、前入居者の亡くなり方によって嫌悪される度合いが変わってくる。
一般的に考えて、殺人事件があった部屋は普通住みたくないだろうから心理的瑕疵で、自殺の部屋もまあ嫌だろうから心理的瑕疵で、孤独死は……発見されるのが遅くて遺体が腐敗していたなら心理的瑕疵で、亡くなってすぐに発見された場合も……まあ心理的瑕疵かなぁ、でも家族に看取られて亡くなった部屋なら別に心理的瑕疵じゃないかなぁ……みたいに、どのラインから「心理的瑕疵物件」に相当するかがケースバイケース、曖昧のままに今日まで来てしまっているのである。
関係者を住まわせて「告知義務を消す」業者も
さらには、そこが心理的瑕疵物件だとして、「ここで自殺がありました」などという過去をいつまで告知すべきか――すなわち、“告知期間”も明確に定められてはいない。
一応次の入居者が住めば、その次の入居者には告知しなくていいという慣習が不動産業界で一般的になりつつあるようだが、中にはそれを逆手に取って、短期間だけ関係者を住まわせて無理やり告知義務を消す業者が現れたりして、「それは良くないんじゃない?」と突っ込まれるような問題も起きている。
しかし逆に、僕が内見に行った物件の中には「前の前の入居者が自殺、前入居者は1ヶ月で退居」と、わざわざ告知を入れているものもあった。一人挟んでも告知義務は消さない方がいいかなぁという家主側の判断なのだろう。
このように、大体が入居者からのクレームが来ない程度の“なんとなく”の告知基準を売主・貸主側が設定しているのが現状だ。
なので、中には「事故物件だけどバレなければいいや」と告知義務を無視して事実を隠そうとする家主も存在する。