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「マスク曜日制」「自宅隔離中に死亡」 PCR検査多数の韓国、新型コロナ対策の“反省点”

2020/03/06

genre : 社会, 国際, 医療

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 韓国では3月に入り、フェーズが変わったといわれ始めた。

 政府は来週までを感染の拡大を防ぐ重要な時期として位置づけ、韓国では今、「社会的な距離置き」という言葉がさかんに飛びかっている。これは、人と人との距離をとる、という意味合いで、新型コロナウイルス感染者のクラスター(集団)が発生していることから、人の集まる所に行かない、避ける、集まりは延期するなど、ようは密集状態を作らないように、という呼びかけのようなもの。

 毎週、ソウルの駐韓日本大使館前で慰安婦問題の解決を求めて行われる「水曜集会」も先週からはオンライン集会になり、街からはデモも消えた。

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「これからは死亡者を減らすことが目標」

 3月5日、韓国での感染者数は6000人を超えた。2月26日に1000人を超えてからわずか1週間。一日に909人の感染者が確認された日もあり、減少の気配はまだ見られない。現在進行している検査数だけでも2万件あまり、累積では14万6000件あまり(5日現在)。来週までが拡大を防げるかの“ゴールデンタイム”といわれ、緊張が続いている。

3日、青瓦台の会議で発言する文在寅 ©時事通信社

 日本では新型コロナウイルスのPCR検査の実施数を巡る論戦が続いているが、韓国ではどうだろうか。

「韓国では検査は迅速に行われたと思います。問題はその後。これからは患者数と死亡者を減らすことが目標になる」

 こう話すのは、キム・ウジュ高麗大学付属九老病院感染内科教授だ。韓国の新型コロナウイルスによる死亡者は41人(5日現在)だ。

「PCR検査は2015年のMERS(中東呼吸器症候群)の際も多く使用されました。防疫の最初の段階は、感染しているか否かを診断し、感染していれば感染者の動線と接触者を確認し、隔離することです。

 韓国では、2009年の新型インフルエンザ、2015年にはMERSまで経験しましたから、この頃から診断キットの開発に大手企業やベンチャー企業が参入していて、韓国という国の規模に比べそれら開発会社の規模は大きい。よって、多くの検査を実施することが可能でした。

陰圧病院隔離に医療リソースが集中

 ただ、すでに市中感染が広がる中で、今わかっている感染者数は氷山の一角とみるべきでしょう。

©iStock.com

 問題はこの後です。MERSの時の経験から、今回の新型コロナウイルスも感染が確認された患者は入院させて陰圧室隔離していましたが、MERSの時とは感染者数の規模が大きく違う(MERSは186人の感染者が出たと報告されている)。陰圧室隔離に医療リソースが集中してしまい、治療が追いついていない。最悪の事態を想定してシナリオを組み立てなければならなかった。

 これからは、どう治療していくかや、感染拡大を防ぎながらも、患者数と死亡者数を減少させることに注力しなければなりません」