2020年1月から始まった冬のテレビドラマ。今期の特徴は、地上波で放送されている作品のうち6本が“医療ドラマ”だったことだろう。
医療ドラマは、低コストで高い視聴率が見込める
「安定した視聴率を見込めるドラマは医療モノと刑事モノ。刑事モノはロケが多いのに対し、医療ドラマはセットさえ組めば何度も撮影可能です。低コストで制作できて高い視聴率が期待できるため、医療ドラマは企画が通りやすい」(テレビ業界関係者)
だが、一概に医療ドラマといっても、今期のラインナップをみるとテーマは多岐にわたっている。脳外科医たちの活躍を描く「トップナイフ ―天才脳外科医の条件―」(日本テレビ系)、ドS医師と新米看護師のラブコメディ「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)など、これまでの医療ドラマにもあった“王道”路線だけでなく、がん治療の現場に焦点を当てた「アライブ がん専門医のカルテ」(フジテレビ系)、救命救急医である僧侶の奮闘を描いた「病室で念仏を唱えないでください」(TBS系)などの“切り口勝負”の医療ドラマも。実在する地方病院の再生をドラマ化した「病院の治しかた ドクター有原の挑戦」(テレビ東京系)、阪神淡路大震災で活躍した精神科医の半生を描いた「心の傷を癒すということ」(NHK)など、実話に基づいた作品もある。
現実路線で勝負している「トップナイフ」
そのなかで視聴率トップを走るのは、天海祐希が主演を務める「トップナイフ ―天才脳外科医の条件―」。天海祐希、椎名桔平、永山絢斗、広瀬アリスらが演じる“トップナイフ(天才脳外科医)”たちが活躍する、医療ドラマの王道を極めた作品だ。初回視聴率は13.0%(ビデオリサーチ・関東地区 ※以下同)と好発進。平均視聴率は11%を超えている。
「女性の天才外科医モノで、男勝りの天海祐希が主演。明らかに米倉涼子主演の『ドクターX』を意識したキャスティングになっています」(同前)
しかし、「ドクターX」では荒唐無稽とも言える大門未知子の超人ぶりが人気を呼んだのに対し、「トップナイフ」は現実路線で勝負しているという。例えば第1話、工場の爆発事故に巻き込まれ、ドクターヘリで運ばれてきた急患を深山(天海)が執刀するシーン。脳神経外科関係者は「脳神経外科の実臨床としても一見の価値があるほどリアルだった」と評す。
「ドリルで頭蓋骨に穴を空けるときは、普通だったらドリルの先が骨の粉で見づらくならないよう、水をかけながら穴をあけるんです。しかしドラマでは粉砕された骨が舞う非常に細かい描写がありました。その時は水をかけられないほど緊急性の高い状況だったという表現でしょう。医療関係者にしかわからない描写かもしれませんが、忠実に再現されていました」(脳神経外科関係者)
しかし同じシーンに疑問を持った医師もいる。