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「26度の湯で新型コロナ予防」にだまされた? 医師が教える、デマを見分ける5つのコツ

放射線科医・医療ジャーナリストの松村むつみ氏が解説

2020/03/12

 新型コロナウイルスに関しても、PCR検査が増えない状況に対して、「国立感染症研究所(以下、感染研)のOBが邪魔をしている」などの陰謀論が唱えられたが、録音や記録などのファクトが出てこないかぎり、 このような「個人の感想」を直ちに鵜呑みにすることは勧められない。

 また、「親安倍」「反安倍」などの政治的文脈で語られる医学の話は、結論ありきのことが多く、医学的な検討がなされていることは少ないことも覚えておくべきだろう。

4.一方向だけの取材

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 ワイドショーなどの番組では、連日「検査を受けられずたらい回し」の報道があったが、患者側のみの訴えで構成され、医学的経過が不明瞭なケースも少なくなかった。

  PCRの国内検査体制には課題が山積みであることは事実だ。1月末に感染研が自家調整の遺伝子検査を確立したが、国内の検査体制の整備が、感染の広がりに追いついていない。保険適用がなされるまでの間、医師が必要と判断しても検査を断られてしまう例が続出し、日本医師会が調査を行ったところ、30例あまりの不適切なケースがあったことが報告された。

 しかし、当事者の一方だけを取材した報道がフェアであるはずがない。ひとつのケースについて、患者、医師双方からの情報が報道できている場合は、比較的フェアな報道がなされていると考えられるのではないだろうか。

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5.利益相反がある、またはその可能性

 例えば、製薬会社の会社員や、製薬会社から資金提供を受けた研究者が、ある薬の効果について報告した場合、利益相反を開示する必要がある。こういったケースでは、利益相反があること自体が悪いのではなく、 必ずしも全例に情報の偏りがあるわけではないが、 見る側が、「そのような情報である」と、認識することが必要だ。

 治療法が確立しておらず、治療薬が存在しない新型コロナウイルス感染症に関しては今後の問題なのだろうが、ニュースを見る側の視点としては、必要なポイントだろう。