昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

子供を「虐待」してしまう理由を「仕事」に置き換えてみると……――青木るえか「テレビ健康診断」

『#もしかしてしんどい?~虐待を考えるキャンペーン特番~』(NHK Eテレ)

2020/03/14

 最近いちばん見入ってしまうのが「栗原心愛(みあ)さん虐待死事件」の裁判ニュースなので、これは見逃すわけにはいかない。『#もしかしてしんどい?~虐待を考えるキャンペーン特番~』。土曜日の夜9時から1時間。

 さすがNHK。といっても総合ではなくEテレですが。子供を虐待してしまう状況に、どうやって母親が追い込まれていくのか、VTRで見ながら関ジャニ∞の横山裕や眞鍋かをりがトークする。

©iStock.com

「母親が追い込まれる」ということはつまり「父親はわからんだろう、母がこんなにタイヘンなのを」と言いたい番組なわけだ。子供の虐待(の原因)ってそれだけじゃないと思うが、「今の日本のお母さんがものすごくたいへんである」ことがもっと知られるのはいいことだ。どんどん知らせてくれ!

 でも、「こんなにタイヘンなんだ!」って必死に、具体的に、細かく言えば言うほど「あーわかったわかった(うるせーよ好きで産んだんだろ)」みたいな空気がどこからともなく湧いてきたりする。この番組はそうならないような工夫がこらされていた。「お母さんが子供のことで追い詰められていくこと」を「お父さんが職場で上司や部下や取引先にささいなことで追い詰められていくこと」に置き換えて見せるのだ。「建築士のお父さんが好きな設計の仕事をしている=子供を産む」「上司に無理な要求されるが断れない=赤ん坊が泣いてぐずる」「テキトーな部下は仕事もテキトー=子供は言うこときかず家をめちゃくちゃに」。こんなことが積み重なってまわりに助けを求めても、他人事として流されてしまったり、何の役にも立たない激励をされて終わる。父=母は、会社=家で追い詰められ……。こういう置き換えで見せてくれるわけだ。

 世のお父さんたちに、母の抱えるキツさを説明する目的としてはわりとうまいかもしれない。「うへーこれはキツイ、こうなったらもう逃げ場ねえし」と実感できる。ただ「オレだってキツイんだからそっちはそっちでやってくれよ!」とかいうイヤな想像もしてしまったが。

 私は「弱いものを虐める歓び」からくる子供の虐待というものも、実はすごく多いと思っている。この番組は虐待防止番組としては「つらい母の立場に寄り添う」ための番組だろうから眼目がちがうんだけど、やはり悲惨な虐待事件を見るにつけ「嗜癖としての虐待」にも触れといてほしかった。というのも、切れ長の目を考え深げにひそめ、関西弁でトツトツとコメントする横山裕を見ていたら、「この人が虐待父を演じるドラマ」があったらすごい名作になるんじゃないかと思わされたからです。ぜったいうまくやる。血が凍るような虐待父の役を。

INFORMATION

『#もしかしてしんどい?~虐待を考えるキャンペーン特番~』
NHK Eテレ 2/29(土)放送 21:00~
https://www.nhk.or.jp/kodomo-pj/20200229.html

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー