昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2020/03/13

 別のリスクもある。3月6日に感染が確認された中部地方の男性は、副業がバレることをおそれて、当初は保健所に対して発症後の一部の行動を隠していた。自分がこの男性と同様の状況だった場合、保健所に正直に申告できるかは悩ましいところだろう。

 新型コロナウイルスは、医療体制を混乱に陥れたり世界経済に巨大なダメージを与えたりするほかに、私たち庶民に聖人並みの品行方正な行動を強いるという点においても、恐るべき流行病なのである。

もし日本のカルト村で感染が拡大したら……

 これは言い換えれば、品行方正ではない人――。つまり、社会の規範から外れた行為をおこなっている人や集団が感染した場合に、その実態が隠蔽されやすいことも意味している。

 例えば韓国での感染拡大は、閉鎖的な新宗教「新天地イエス教会」内部で流行の爆発が起きたからだとされる(3月8日午後時点の韓国国内の感染者7134人のうち、約6割が「新天地」の関係者である)。「新天地」はカルト的な性質ゆえに信者が外部に向けて信仰を隠しているケースが多く、教団と信者がともに感染経路の調査に非協力的だったことで混乱を招いた。

韓国で新型コロナウイルスの感染が拡大するきっかけとなったとされる礼拝を行った宗教団体「新天地イエス教会」の教祖イ・マンヒ総会長。国民に向けて謝罪した ©時事通信社

 日本においても、似たような秘密の場は夜の店に限らず多々あるはずだろう。怪しいカルト村やマルチ商法のセミナー、一部のブラック企業、反政府的な政治セクトなどの内部で感染者が出た場合、おそらく初動段階で隠蔽がなされるはずだ。

 また、勤務先の過酷な処遇から逃亡した外国人技能実習生たちも、おそらくリスクが高い。彼らの多くは大都市部の中国系やベトナム系などの同胞のコミュニティ内に潜伏し、4~6人で共同生活を送りながら不法就労状態で働いている。

 逃亡実習生の間では日本の公的機関との接触が強制送還につながると考えられているため、彼らは軽犯罪の被害に遭っても警察署に行かず、軽いケガや病気では病院にも行かない。感染が蔓延した場合も、相当深刻な状態になるまで表に出ない可能性が高い。

「ウイルスの流行は人間の本性をあぶりだす」

「今回のウイルスの流行は人間の本性をあぶりだす。良い人間はいっそう良い振る舞いをするし、悪い人間はいっそう悪い振る舞いをするし、卑怯な人間はいっそう卑怯な振る舞いをする」

 ややウロ覚えで恐縮だが、1カ月ほど前に中国のネット上でこうした書き込みを見たことがある。パニック時こそ、人間の本性や普段は隠された秘密が明らかになることを、私たち日本人は9年前の東日本大震災で体験済みだ(震災発生時に不倫相手と一緒にいたことで配偶者と修羅場になったケースなどは、当時よくささやかれたものである)。

 新型コロナウイルスもまた、社会や人間のダメな部分に巣食うという特徴を持っている。

 第92回選抜高校野球大会の中止が発表され、さらに東京オリンピックの延期すら現実味を帯びてきた。日本では今後も自粛ムードが続く可能性が高く、重苦しい毎日を過ごさざるを得ないだろう。一刻もはやく、鎮圧のときを迎えることを祈りたい。

この記事の写真(4枚)

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー