新型コロナウイルスが、日本が入国を制限している地域以外から流入した疑いが、ウイルスの遺伝子、ゲノム情報の最新研究で浮上してきた。研究が明らかにするのは中国・武漢以外の地域からも1月の時点で静かに世界中にウイルスが広がり始めていた可能性。感染を最初にもたらした各国の「ペイシェント・ゼロ(疫学調査上で集団内最初の患者となった人物)」の解明が進むなかで、各国政府の政策の有効性も問われ始めることは必至だ。
最新の研究成果をもたらしたのは米国などの研究者がつくるnextstrain.org。新型コロナウイルスのゲノム情報を世界中から集め、その近似度に応じて樹形図に表した。研究成果は、ほぼリアルタイムでインターネット上に発表されている。
この樹形図は、どの感染者のウイルスが遺伝的に近いかを示す。
ウイルスのRNAゲノム情報はC、G、A、Tの4種類の文字で表される約3万基にのぼる情報列で、感染を繰り返すごとに、例えば1万文字目のCがGに変わったりAがTに変わったりするなど、徐々に変化していく。そのことから、文字列が違えば違うほど感染を繰り返したことになり、近ければ近いほど、直近の感染である疑いが強くなる。
愛知県蒲郡市でウイルスをまき散らすなどと称して居酒屋を転々とした50代男性の感染者がいたが、ゲノム情報を辿れば、今後、この迷惑な感染者からどれだけ感染が広がったかを探ることも、できるようになるわけだ。
日本へのウイルスの侵入は5回あった
この研究が示す日本への感染ルートは多岐にわたる。
日本の感染者から集められたゲノムは全部で10だが、樹形図を参照すれば、遺伝的には大きく5系統に分かれるのがみてとれる。5系統はその後、日本だけでなく中国にも分岐していることから、日本に入る前に中国で5種類に分岐し、それぞれ日本に入ってきた可能性が高い。つまり、5回にわたってウイルスが日本に侵入してきたというわけだ。