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中国に弱腰のWHO 新型コロナ「パンデミック宣言」の不都合な真実

「感染源追跡」最新研究でわかった

2020/03/14

source : 週刊文春デジタル

genre : ニュース, 社会, 医療, 国際, ヘルス

ドイツの「ペイシェント・ゼロ」が欧州各国へ

 ドイツでは1月24日、上海のビジネスマンに会ったドイツ人ビジネスマンが発症。このビジネスマンからウイルスがミュンヘンで広がった。当初はドイツ政府の素早い隔離などで感染拡大は食い止められたかにみえたが、実はこのウイルスが2月に入ってブラジル、フィンランド、イギリス、メキシコ、そして感染が爆発的に広がるイタリアに広がっていたことが明らかになったのだ。

「とても大事な教訓は、たとえクラスターが特定されて隔離されたとしても、次の感染の連鎖を止められたわけではないことだ」

 nextstrain.orgの創設者の一人でウイルスの進化などを研究するフレッド・ハッチンソン癌研究センターのトレバー・ベッドフォード氏はツイッターでそう分析した。

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 nextstrain.orgは「データはシアトル(米国)でも1月中旬に潜在的に広がっていた仮説を支持している」とし、米国で2月に入ってから感染が急拡大した原因も示している。

新型肺炎/テドロスWHO事務局長がパンデミック宣言 ©時事通信社

弱腰の姿勢がウイルスを世界中に広げた

 こうしてみると、世界各国が渡航制限をかける時期、あるいは外出などの自粛を呼びかける時期が遅すぎたということになる。WHOはいまだに中国からの渡航制限を勧告しておらず、この弱腰の姿勢が世界中にウイルスを広げる契機となったのがゲノム情報からも明らかになったわけだ。

 このゲノム情報が明らかにした最大の安心材料をあえて挙げるとすれば、新型コロナウイルスがまだあまり変化していないことだろうか。

 ウイルスは感染を繰り返すごとに変化するが、より致死力が高いウイルスに突然変異する場合もある。ウイルスが突然変異する前に、世界は流行を押さえられるか。ゲノム情報の探求はこの最悪の事態も可視化する。

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