スポーツ庁ホームページを開くと……
たとえば、中止が決まった春の高校野球選抜大会。高野連は3月4日の運営委員会で協議を行い、一旦は無観客で開催する方針を固めましたが、結局3月11日の臨時運営委員会で中止を決めました。
運営委員会が真剣に検討を行った3月4日、ふと気になってスポーツ庁のホームページを開くと、「アスリートのキャリア形成支援施策についての発表会を行いました」との情報がトップ画面に出てきました。高野連が苦渋の選択を迫られているまさにそのタイミングで、にこやかにボードを掲げている写真が……。このタイミングでスポーツ庁が真摯に向き合うべきなのは、本当にこのトピックスなのだろうか。もっと重要なことがあるのではないか、と率直に思いました。危機感を感じることはとてもできませんでした。民間のことに率先して首をつっこみ、音頭をとることで被る可能性のあるリスクを恐れてそしらぬふりを演じているのかもしれない、と首を傾げざるを得ませんでした。
スポーツ庁にはできること、やるべきことがあるはずです。
たとえば、まずは選手の健康を守るという視点から、アスリート向け健康管理アプリを即座に用意し、各競技団体に使用を促す、といった施策は十分に可能でしょう。台湾では、38歳のIT担当大臣が「マスク在庫マップ」アプリをごく短期間で開発し、購買履歴と身分証を紐づけることで国民のマスク不足を解消させました。それに比べれば、決して難しいことではありません。
スポーツ界と同じ問題が日本の組織全体に蔓延
スポーツに限らず、新型コロナウイルスにまつわる一連の動きを見るにつけ、今の日本が抱える深刻な問題が浮き彫りになっていると感じます。
私はこの点について論ずべき立場にはないかもしれませんが、組織のリーダーシップについて常に考えてきた視点から見ると、スポーツ界とまったく同じような問題が日本の組織全体に蔓延していることが、今回見えてきてしまっているように感じます。
たとえば医療現場ではマスク不足が深刻になっている。一方で、政府には743万枚ものマスクの備蓄がある。にもかかわらず、総理は、医療機関への供給について「極めて重要度の高い所に出すことができるか検討したい」(3月4日報道、以下同)と発言しています。
ITを活用した緊急的な対応について問われた79歳のIT担当大臣は、「台湾の事例も参考にしながら緊急時の物品管理のあり方、その発信のあり方について関係省庁と連絡して議論していきたい。それが現実です」と、なぜか突き放したような答弁。
さらに、緊急事態宣言を出すことを可能にするため、政府・与党は新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正を「検討」。
結局のところ、何も決まらない。変わらない。時間だけが過ぎていく。