文春オンライン

新型コロナ対策で見えてこないスポーツ庁の存在感。中途半端なリーダーシップが日本を滅ぼす

池田純「スポーツビジネス・ストロングスタイル」#1

2020/03/19
note

今の日本にはびこる“忖度”と“現場感覚の欠如”

 しかし哀しいかな、今の日本には“忖度”がはびこっています。

 適切な決断を下すために徹底的に検討するべき段階で、部下は、ときにはリーダーの意思に反することを言わなければならないにもかかわらず、自分の立場が危うくなると考え、進言することをやめる。結果、リーダーは中途半端な検討をしただけに近い偏った情報で方向性を決める判断をすることになる。そうした内向きな忖度による不利益は、国民に降りかかる。自らの落ち度を認めることもできないから、取り繕うことに時間と労力を費やす――。そんな悪循環をぐるぐると繰り返すばかりのように感じてなりません。

©iStock.com

 また、現場感覚の欠如も、リーダーの即時的な決断を阻んでいるように思います。一般生活者としての感覚を常日頃から大切に持っていれば、国民が何を求めているのか、的確かつ迅速に把握できるはずです。台湾のIT大臣にはそれがきっとあったからこそ、「とにかくまずはマスクだ」と真っ先に動き、在庫マップのアイディアを即座に実行に移せたのでしょう。

ADVERTISEMENT

 かたや日本では、国会でのやりとりを見聞きする限り、そうした国民生活、国民感覚との乖離は大きいように思います。

大切なのは普段から現場に出て、その空気を吸うこと

 今後のスポーツ界も右往左往が続くでしょう。

 これからも、試合開催の可否や時期などについて、各競技界のリーダーは大きな決断をする場面が出てくるでしょう。そのときに、選手やファンの思い、あるいは運営上の具体的な課題点など、いわゆる“現場”の感覚をどれだけ持ち合わせているかが問われます。

 そして、誰を、どこを見ているか。すべての判断基準が保身でないことが問われます。

 私はベイスターズの社長に就任した当初、野球の現場をまずは知ることに力を注ぎました。横浜スタジアムのグラウンドに出て、キャッチボールをすることから始めました。チーム関係者や報道陣からは奇異な目で見られていましたが、現場を知るリーダーでいるために必要なステップでした。

©iStock.com

 普段から現場に出て、その空気を吸っているリーダーでなければ、重要な決断を的確かつ迅速に行うことは難しいと思います。

 新型コロナウイルスは、たしかに怖いかもしれない。しかし私はそれと同等に、本物のリーダー不在の日本に蔓延する“忖度”や“保身”、そして“現場感覚で決められない病”が、深刻であるように思えてなりません。

新型コロナ対策で見えてこないスポーツ庁の存在感。中途半端なリーダーシップが日本を滅ぼす

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー