「いじめがあったと判断することは極めて困難」
都教委は2016年1月、「いじめ問題対策委員会」を開催した上で、「調査部会」の委員を指名し、調査を開始した。1年8ヶ月後の2017年9月、調査部会が報告書を提出した。
それによると、「いじめ問題に対する指導を行うに際して、学校、教職員がその端緒として活用する定義としては有用であるとしても、少なくとも、いじめ防止対策推進法に基づき重大事態の調査が行われるに当たってはこれをいじめと捉えることは広範にすぎる」と、法の定義を採用せずに、いじめの有無を判断した。その上で、「収集できた資料の範囲内で判断する限りにおいて、いじめがあったと判断することは極めて困難」と結論づけた。
Aさんの遺族は、調査内容を不服として、再調査を求めた。都は2017年11月、都民安全推進本部の中で、調査委の報告書に関する専門家による検証チームを設置した。その結果、2018年7月、再調査をすることを決めた。ただ、提訴時効を迎えることもあり、遺族は訴訟に踏み切った。
資料の写しが見つかったことを長きにわたり遺族に伝えず
また、遺族は、調査で使用された資料の開示を求めていた。2018年12月、都としては「不存在」を理由に開示しなかった。しかし、今回、資料の写しが見つかった。
「写しがあるとわかったのは2020年2月です。都総務部文書課から、『資料が見つかった』と連絡がありました。すでに裁判になっていたので、翌月、代理人が資料のコピーを受け取りました。そのときの説明で『該当の資料はすでに破棄済みだったが、教員の聞き取り内容の写しが見つかった』と告げられたんです。昨年7月にわかっていたのに、なぜ今年の2月まで連絡がなかったのか疑問です」(遺族)
教員の個人名は黒塗りになっているものの、発言内容は記されている状態だという。