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「少なくとも5年間保存することが望ましい」はずの公文書

 都教育庁は、遺族に対して、自殺したAさんに関する情報や教育庁が作成した報告書、調査部会の関連資料などを「公文書である」とする文書を「教育庁指導部長」名で遺族に提出している。そこには、遺族の申し出がある場合をのぞいて、「東京都教育委員会文書管理規則第45条及び同規則別表に定める保存期間に関わらず、破棄することなく保存します」と書いてある。

 公文書の場合は、重要度によって保存期間が定められている。「東京都教育委員会文書管理規則」では、保存期間が「1年未満」「1年」「3年」「5年」「10年」「長期」と区分されているが、どの文書にあたるのかで、資料破棄の是非も問われる。

 なお、文部科学省が作成した「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2017年3月)では、「個別の重大事態の調査に係る記録については、指導要録の保存期間に合わせて、少なくとも5年間保存することが望ましい」とされている。

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 今回の口頭弁論では、遺族側代理人は「今年になって資料が見つかったと連絡があったのは遺憾だが、この資料を踏まえて改めて主張をしたい」と話した。しかし、裁判長が都側代理人に対応を求めると、「必要性については疑問」との姿勢を見せながらも、「必要なものは出していく。積極的に隠していたものではない」と弁明した。そのため、遺族側代理人は、都側の資料が提出されてから、主張するとした。

開示数は増えても「のり弁」状態

「これまで都側には裏切られてきました。ほかにも、『不存在』とされてきた資料の写しがあるのではないでしょうか。それに、これまで『のり弁』(黒塗り)も多かったんですが、資料やその写しがあるとして、どこまで開示するのでしょうか」(遺族)

 情報公開は小池百合子都知事の選挙公約の一つだった。2016年の12月定例会で、公文書管理条例制定の意思を表明した。2017年6月、条例が制定された。たしかに、開示決定件数は2017年度に11858件で、過去最高になった。しかし、相変わらず全面黒塗りの「のり弁」状態のものも少なくない。

全面黒塗りの資料も少なくない(2016年10月撮影) ©渋井哲也

 今回の件でも、全文黒塗りで出された部分が多くあった。しかも今回見つかった60ページ分は、一度は「不存在」とされていた。つまり、作成した後に破棄されたことになる。そのため、都側の「情報隠し」ではないかと疑われる。小池知事はどのような対応を取るのか。

 遺族側は近く、記者会見をする予定だという。