イタリア国立衛生研究所(ISS)が発表したところでは、死者の平均年齢は79.5歳。そのうち99%が高血圧や糖尿病などの複合疾患を抱えていたという。そもそも65歳以上の人口が22%に達する高齢化社会で、85歳以上の半数は一人暮らしというデータもある。感染拡大を止められるかは、お年寄りの協力はもとより、普段社会に出て活動する年代の人々の自覚にかかっているのだ。
スーパー、八百屋、パン屋、肉屋、薬局は開いているが……
さて、筆者が在住するのもそのロンバルディア州だ。COVID-19の集団感染源とされた地域からは比較的遠く、感染者が一番少ないヴァレーゼ県の街であっても、表情は変わった。
人がいない。ミラノ県との境に近いサロンノという街の中心部で、日中開いている店はざっと数えて10軒ぐらい。スーパーに八百屋、パン屋に肉屋、それと薬局。コーヒーを飲んで朝食を取りつつ、御近所さんと世間話をする場となっているバールは全て休業だ。現在は「集団をつくること」も禁止されている。しばらくは我関せずベンチに座る御仁や、学校が休校になっているにも関わらず市内にたむろする中高生の姿も目立ったが、それもなくなった。
この街の駅はミラノとマルペンサ空港を結ぶ連絡特急が停まり、何本も路線が枝分かれする主要駅の一つである。にもかかわらず、日中に見てみれば合計で9本のホームを抱える構内に人は1人か2人。列車の時刻掲示ビジョンには「SOPPRESSO(運休)」の文字が目立つ。人々の移動によるウイルス蔓延を恐れて、州政府の要請で間引き運転をさせられているのだ。
移動には自己申告書の携帯が義務付けられており、住民は住所氏名に年齢、身分証明書の番号、行き先と外出の目的、ならびにウイルス感染や感染者との接触の有無を記すことになっている。当初これは在住の市町村から外に移動する際に必要なものと理解されていたが、今や近場のスーパーに買い物をするときにも必要なものとなった。
夜の7時、街はガラガラ
さらにこの街は、本来ならミラノへの通勤通学圏。夕方の6時や7時には家路に就く人で人影は多いのだが、今の時期はもう深夜の様相だ。多くの人が休暇の前倒しなどで活動を自粛するか、仕事を在宅勤務やスマートワーキングに切り替えたのだ。
ミラノの税務補助事務所に勤める、隣町カロンノ在住の友人ラウラ・ロマッツィさんもその一人だ。首相令に先立ち、不要不急の移動は避けデスクワークは家でやることに会社で決めたのだそうだ。「そもそも私の街の駅からは電車が運休してるからミラノにも通えない」という彼女に電話で様子をきくと「やだ、またブロックした。私のPCの回線が遅くてスマートワーキングにならないの」と苦笑していた。