当初イタリアで出されていた移動制限は、ウイルス感染者の多かったロンバルディア州並びに北部14県に限られていた。ところが7日にそのニュースが出回ると、南部からの出身者が一斉に夜行列車や飛行機に群がって“脱出”を図ったのである。感染者集団を拡散させる行為として問題視され、数日後に国を挙げた外出制限へと至った。なお医療関係者間での感染を避けるため、感染者のまだ少ないペルージャであっても医師間の連絡はもっぱらビデオ通話に限定し、カルテも電子化に努めているのだそうだ。
「他人とは5m距離をとっているわ」
一方学校は、イタリア南部でも早い時期に休校が決定された。「隔離生活を始めて2週間になる。でも続くとやっぱり不安が増すよね」。シチリア島はカターニアの中学校で保健体育の教師を務めるシモーナ・アグルッソさんは率直な気持ちを口にした。「父が心臓病持ちで家族に絶対移せないから、他人とは1mと言わず5m距離をとっているわ」と言う彼女の不安の中心は学校の再開後。イタリアでの学校年度は6月までなのだ。
「イタリアの教師は、休校の間に遠隔授業を行なってカリキュラムを進められる体制にないのよ。学校のマルチメディア機器って電子黒板ぐらいだし、あとはオンラインでの映像素材を探すか。例えば私は授業で介護を教えるんだけど、車椅子の補助なんてどうやって教えるのよ。それと何よりシチリアの場合は、PCやプリンターのある家庭が少ないの。再開したあとにカリキュラムを終わらせられるのか、それで生徒に評価を付けられるのか。悩んでる教師は多いと思うよ」
その一方でシモーナさんは、他の職業の人たちにも思いを馳せていた。「私のような国に雇われた教師なら休校期間中もお給料が出るからまだいいけれど、フリーランスの方々とか本当に大変だろうと思う。何より医療関係の方々とか、大変なリスクを負いながら仕事をされてる方々を思うとね」。